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第4章ー3 雪割生活スタート
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部屋はたくさんあれど、不慣れなところで一人で寝かせておく訳にもいかないと、母親は田口の部屋に布団を一式多めに準備しておいていた。
しばらく使っていないせいで、埃臭い。
「すみません。他の部屋も準備できるのですが。狭いですよね」
そう言いつつ案内された田口の部屋に入って、保住は驚く。
「お前の部屋は多目的ホールか」
「え、すみません。変ですか?」
田口の自宅は、昔ながらの農家の作りだ。
雨どいがあって、縁側があって、部屋の仕切りは障子だ。
田口の部屋も然り。
普通の住宅にしか住んだことのない保住からしたら、こんな広い部屋は宴会場か旅館でしか見たことがない。
「何畳あるんだ?」
「えっと。15畳です」
保住は笑いだす。
「通りで」
「え?」
「いや。きっちりしている割に、たまにスケールのでかいことを言い出すのは、こういう環境で育ったからだな」
「そうでしょうか」
「こんな広い部屋で悠々と過ごせるなんて羨ましい」
田口にとったら当たり前がそうではないと知らされると、なんだか恥ずかしい。
彼は黙々と布団を敷くと、保住を促す。
「どうぞ、ここで」
「すまない」
「おれ、ちょっと用足ししてきますから、着替えて横になっていてください。夕飯は別に一緒にしなくていいんで。ここにいてもらって大丈夫です。後、トイレはここ出て右の突き当りなんで。古いので驚かないでくださいね」
「ありがとう」
「では、また来ます」
なんだか気恥ずかしい。
仕事の話だったらできるけど。
こういうプライベートになると、共通点がある訳でもないし。
話しをするネタもない。
田口は、ぺこりとしてから廊下に出た。
そして軽くため息を吐く。
家族の恥をさらすようで嫌だからだ。
気が重い。
これからのことを考えると頭が痛んだ。
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