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第4章ー6 中学生
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いつも出会う場所ではないからか。
いつもの田口じゃないみたい。
いつも堅苦しい彼は、さわやかなミントブルーのTシャツ。
デニム姿だ。
なんだか笑ってしまう。
「なんです?」
「いや。悪い。いつもかっちりした田口しか知らないから。なんだか、ますます中学生に見える」
「な?!中学生って。ひどくないですか?!しかも、ますますの表現って、普段も中学生ってことですよね?」
田口の反応は、面白い。
保住は、愉快な気持ちになって笑い出す。
笑われた田口は、不本意な顔をしていたが、あまりにもおかしそうに保住が笑うものだから、怒る気にもならない。
「本気で係長って友達いないでしょう?」
「よく分かったな」
涙を浮かべて笑う。
「こんな調子だからな。いる訳がない!」
保住は、言い切る。
田口も笑ってしまう。
「本当。係長は変わってますよ」
「そうかな。そういう田口もそうだろう。最初に友達はいませんって言っていたな」
「確かに。そうですね」
確かにそう。
「似ているんですかね?」
「似ているのかも知れないな」
保住は笑う。
「本当は、年下の部下を持つのは初めてで、戸惑っていた。仲良くできるのか、きちんと教育できるのか不安だった」
突然の話に、田口は目を丸くする。
そして苦笑した。
「係長でもそんなことを思うのですか?」
「思う」
「意外です」
「しかし、思ったよりもやりやすい」
「そうですか?手がかかりますよ」
「そんなことはない。おれが下手なだけだ。要領を得ない。自分一人で行動するのは楽だが、人を上手く使うということは難しい」
「違うって言いますよね」
「そうだな。実感した」
だけど。
田口は、いい奴だった。
スポンジみたいに、なんでも吸収してくれるし、素直。
真っ直ぐに伸びてくる。
その内、すぐに追い抜かされそうだ。
保住は、そう思う。
そこまで褒めると、後で御幣があるかも知れないから、言わないけど。
期待以上の部下だ。
「似ている部分があるから、上手くいくのかも知れないな」
「上手く行っていると思ってもらえるなら嬉しいですけど」
保住は、そこで声色を替える。
「お前はこんな幸せな環境で育っているのに、どうして卑屈になるのだ?満たされてきたのではないか」
「そうでしょうか。幸せって訳でもないんですよ。家族が多いと、思いも増えるものです」
「確かにな」
こんな話。
保住にしても仕方がないとは思いつつ、つい話が続く。
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