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第4章ー11 芽衣の夢
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「芽衣ちゃんはここを出てやりたいことあるの?」
彼女は、頷く。
「お母さんみたいに、野菜の研究したい。もっと美味しくて、安定して作れるようになるといい。それに、今まで誰も食べたことのないような野菜作ってみたいの」
「それはそれは」
保住は、感心する。
15そこそこの子が。
しっかりしている。
「それに、日本のこの技術を発展途上の国にも伝えたり、世界中の人に知ってもらいたい」
「芽衣ちゃん」
ある意味自分よりもしっかりしているのではないか?
田口は内心、苦笑する。
自分は、一公務員なのに。
彼女は、世界にも飛び出したいらしい。
「素晴らしい!」
突然、保住が叫ぶ。
芽衣が驚いたのは当然だが、田口も驚く。
「素晴らしいな。その年で視野が広い。感心する!それは是非叶えなくてはなるまい」
「係長、しかし。うちは古い家ですから。なかなか難しいですよ。男ばっかりの中でせっかく生まれた女の子を手放すとは思えません」
「田口、なにを言う。お前がそんなんだからダメなのだ。こんなステキな夢がある姪っ子を見捨てるのか?そんなつまらないことで潰してしまっていい夢なのか?」
「そんなことは言ってませんが」
「では、なにも迷うことはないではないか。親御さんの気持ちは想像はつく。おれは親にはなっていないからな。想像だけだが。きっと、身を裂くような思いなのだろう。しかし、可愛いからこそ、旅をさせねば」
「係長」
「彼女のノートを見ると、多分勉強の仕方が分からないのだろうと理解する。やり方がわかれば、勉強なんていくらでもできる。こんなステキな発想があるのだ。センスがある」
芽衣は、保住の言葉に顔を赤くした。
「自分の夢は自分で掴み取るしかない。田口にやってもらうことでもないのだ」
保住は、芽衣を見る。
「相手を説得するには、納得できるような対価が必要だ。君の夢に反対する者たちを有無を言わせず賛同させるには、勉強して結果を出すしかあるまい」
「係長さん……」
保住は、芽衣に手を差し出す。
「見せてみろ」
彼女は、一旦は隠したノートをそっと差し出す。
「ふむ、今一歩だな」
「明日、学力テストなんだけど、全然集中できなくて」
保住は、ノートを机に置く。
「テキストを出してみろ」
芽衣は、保住に言われた通り、テキストを引っ張り出す。
「この問題は、大した応用ではない。この考え方だと、次の問題に支障をきたす。もう一度、最初から理解し直す必要がある」
始まった。
いつもの職場みたいだ。
保住にダメ出しされている芽衣は、自分を見ているようだ。
最初は、面食らっていた芽依だが、保住はさすが頭がいいだけあって教え方が上手だ。
いつの間にか、素直に指導を受けている。
これが始まると、しばらくは終わらないだろう。
田口は苦笑いをして、その場所を離れた。
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