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第4章ー16 心配の仕方
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「これをなんとかしろ」
「体調はどうだ?」とか、そんな言葉もなく。
開口一番に、澤井はそう言う。
保住は苦笑してから、澤井の部屋の応接セットに山積みになっている書類を見渡す。
「随分、暴れたのではないですか」
「お前がいないのが悪い」
「おれのせいですか」
保住は側の書類を手に取り、そして整理を始める。
手伝うそぶりもなく、澤井は自分の椅子にどっかりと座った。
「病み上がりなんだから、もう少し優しく扱ってくださいよ」
「今週、休めと言ったのに出てきたお前が悪い」
「それはそうですが」
書類の頭とお尻を見ながら、保住は書類を仕分けをする。
「どのくらいで終わる?」
「そうですね。流石に一時間は、かかりそうです」
「そうか。なら、別な仕事をしていよう」
「どうぞ、そうしてください。見ていられても仕方がない」
「いちいち減らず口を叩くんだから、調子は戻ってきたようだな」
老眼眼鏡をかけて、澤井はパソコンを眺めながらそう言う。
「そうですね。ええ。結構、調子出てきましたね」
保住も書類を分ける手を止めることはない。
それから、ふと顔を上げて澤井を見る。
「今回は、田口におれを預けてくれたんですね。ありがとうございます。大変面白い経験をさせてもらいました」
「別に。ただ、あいつは少しは使えるからな。お前のこともみれるかと思っただけだ」
「そうですか」
保住は、黙り込んで作業を続けた。
澤井は悪い人ではないのは、よく分かっている。
セクハラやパワハラは日常なのに。
嫌いになれない自分がいることも理解している。
自分は、相当変わり者なのだろうな。
「ちゃんと出来たら昼飯くらいおごってやる」
「局長とランチですか?」
「愚問」
「あまり食欲がありません。ご一緒しても、お相手にはならないかと」
老眼鏡を外して、澤井は保住を見る。
「だからだろ。どうせ何も食わない気だ。強制的に飯食わせてやる」
「ありがた迷惑ですけど。……ありがとうございます」
心配してくれているらしい。
嫌なやつなのに。
保住は、ソファに座りこみ、書類の整理を黙々とこなした。
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