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第5章ー1 初事業の成功
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「どうも、お疲れ様でした!」
バリトンのよく響く声に、小学生の子供たちとその保護者たちは「ありがとうございます」と口々に言った。
「それでは、これにて解散となります。お客様のみなさまからは、好評のコメントをいただきました。本当にありがとうございました。お気をつけてお帰りください」
深々と頭を下げると、一同は拍手をして演奏会の成功を確信した。
出演者が帰宅をし、先程まで満員だった小さなサロンを眺めていると、隣に男がやってきた。
「なかなかの成功だったな」
「係長」
「初めてにしては上出来だ」
「バタバタしてしまいました。申し訳ありません」
「そんなことはない。バタバタはつきものだろうが。あんなものは、バタバタには入らない」
瞳を細める男の笑みは艶やかだ。
目を見張り、それから自分も笑む。
「ありがとうございます」
初めての企画。
この部署に来て初めての仕事。
ずっとサポートしてくれた彼に感謝だ。
「あの!」
「なんだ」
「夕飯をおごらせてください」
「え?」
「お礼です。ここまで来られたのは、係長のおかげです」
「一つの仕事のたびにお礼されていたのでは、大変だ。別に気にするな」
「そう言うことではなくて。おれの気持ちなんです」
真っ直ぐに係長である保住を見る。
瞬きをしていた保住は、両手で田口の頬を軽く叩いた。
「痛!なっ……?」
「見下ろすなよ」
「へ?」
「小さくて悪かったな」
「そう言う意味じゃ……っていうか、そう言う話じゃないじゃないですか!」
照れているのか。
少し頬を赤くする。
「じゃあ、何を食べるのか、おれが決める」
「もちろんです」
きっちり締めていたネクタイを緩めて、いつものスタイルになると、彼はサロンを出て行った。
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