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第6章ー4 危ない仕事
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「係長、大丈夫ですか」
「お帰りなさい」
みんなが笑顔で迎えてくれる中、田口だけが心配そうな顔をしていた。
そうか。
田口は。
自分のことを心配してくれているようだ。
年下の部下に心配されたら終わりだな。
だけど、嫌な気持ちにならないのはどうしてなのだろう。
田口だけが。
ここの中で、保住と澤井のことを少し理解してくれているかも知れない。
そう思っただけで、心が嬉しいのはなぜなのだろうか。
保住は、席に座ってみんなを見た。
「仕事でした」
「今度は、どんな無理難題ですか?」
渡辺は、神妙な面持ち。
「教育長クラスの研修のお手伝いだそうです」
一同は、頭を抱える。
「まじか」
「嘘でしょう……」
「やはり声がかかってしまったか……」
田口は、目をぱちくりだ。
「そんなに大変な仕事なんですか?」
隣の谷口は、田口の腕を掴む。
「お前、この世の終わりだと言える仕事だぞ……」
保住は、苦笑する。
「田口。バスガイドが嫌がる客の職業は何だか知っているか?」
「え?何でしょう?やくざとかでしょうか」
「教師、警官、公務員、医療従事者」
「へ?お堅い仕事じゃないですか」
谷口が付け加える。
「お堅い仕事の人って、羽目を外したら手に負えないものだぞ」
「教師のトップの教育長たちの羽目の外しようったらないからな。覚悟しておけよ」
「……想像できませんが」
「体験しないと理解できんだろう。身をもって知るがいい」
悪のセリフみたいなことを言い放って渡辺は、顔色を悪くした。
田口は、何だか恐ろしくなる。
「でも、研修会ですよね?羽目を外す場面あるのでしょうか?」
小さな抵抗であることは承知の上で尋ねる。
それに答えたのは保住だ。
「研修会は、建前だ。内情は、年に一度の懇親会だ」
「それはやばそうですね」
「だろ?」
矢部の問いに田口は頷いた。
これは、結構危ない事業だ。
「係長、またあの人来ますよね。変わったって聞いていませんから」
渡辺は、ふと声を上げる。
保住も珍しく苦笑いをしていた。
「本当だ。忘れていた」
「ヤバイ、あの人はヤバイ」
「そんなに危ない奴が来るのですか?」
ハラハラしてしまう。
他のみんなは、田口の戦きようがおかしくて、更に話を盛っている。
「お前な、すげえやべえ奴くるぞ」
「そうだ。お前の首なんか一捻りだからな」
「そんな……」
顔色も表情も変わらないのに、目が泳いでくる田口は、結構内心焦っている様子がうかがえる。
一同は、爆笑だ。
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