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第7章ー1 不機嫌
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「妹が世話になったそうだな」
翌日出勤すると、開口一番にそう言われた。
「世話というか。おはようございます」
「おはよう」
「ただ合コンの帰り道で出くわしただけですよ」
「そうか?随分、さわやかで素敵な市役所職員という印象を与えたそうじゃないか」
「嫌味ですか。それ」
昨日は、この人の指示で深夜まで仕事をしていたと言うのに。
朝会っての一番がこれか。
田口だって、内心むっとすることもある。
「怒ったか?」
「怒っていません」
「怒っている声色だ」
「別に怒っているのではありません。ですが、からかわれているようで嫌なだけです」
「それが怒っていると言うのだろう?」
二人の会話に、渡辺が割って入る。
「まあまあ、お二人。痴話げんかみたいなのを朝から繰り広げるのはやめてもらえませんか」
「痴話げんかって……」
田口は、ぱっと顔を上げる。
しかし、保住はけろっとして渡辺を見る。
「喧嘩ではありませんよ。ただ、からかっているだけです」
「やっぱり!」
田口は、ますます保住に食ってかかる。
それを、更に渡辺が止めた。
「朝一の会議のストレスをここで晴らすのはやめましょうよ。係長」
渡辺の言葉にはっとする。
そうか。
自分も深夜まで仕事をしていたが、保住はもっと寝不足の様子だ。
今朝の会議の準備だったのだろうか。
目の下には隈。
いつも顔色が悪いクセに、更に悪い。
寝ぐせもひどいし。
「徹夜だったんですか?」
心配そうに保住を見る。
「いつものことだ」
彼は心底機嫌が悪いらしい。
言葉数も少ないし、言葉に棘がある。
一年、一緒に仕事をしてきたが、ここまで機嫌が悪い彼は見たことがない。
怒る気も失せた。
自分が入り込む余地が見えない。
なんだか拒絶されているみたいで、居心地が悪かった。
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