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第7章ー3 市役所一の最狂メンバー
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「そうです。星音堂では、毎年演奏会企画をしていますので、オペラついでに演奏会をすることで、交通費や楽器運搬費用を抑えられます」
「財布は一緒だがな」
澤井は舌打ちをするが、保住はあっけらかんとしている。
「平等負担ですよ。そういうごまかしは大事だし、お得感があります」
「まあな」
「同じ要領なら……」
澤井の言葉に田口は頷く。
「無論、メインキャストも然りです」
そして、彼は続ける。
「こう言った経費削減を要所要所で勘案してみた結果がこれです」
書類を見切ったのか。
澤井は、乱暴にテーブルに叩きつける。
どういう意味?
通さないか?
一同は固唾を飲んで、彼の言葉を待つ。
保住だけが、しれっとした涼しげな顔。
こうしてみると、整っているが故に感情が乗らない顔付きは、人形みたいで冷たい。
澤井も気になるが、保住のことが気になって仕方がなかった。
「わかった」
「局長……」
渡辺は、ほっと表情を緩める。
「おれは、隠し事は嫌いだ。だから敢えて言うが、この事業は、おれの進退がかかっている。お前たち、失敗は許されない」
「勿論です」
矢部が答える。
「成功ではなく、大成功、ですよね?」
谷口も頷いた。
「基本、他人は信用しないが。こればかりは、おれ一人でやれるとは思っていない。お前たちのことも、然程信用はしていないが、少なくとも他の奴らよりは出来そうだ」
「ありがとうございます」
渡辺は、頭を下げる。
澤井に加担するのは、澤井の手先になったみたいで不本意である。
ここの部署のみんなが、澤井に取り入って出世したい、なんて思っていないことも重々承知だ。
澤井は、名声や地位のため。
ほかのメンバーたちは、事業の成功、さらにその先には梅沢のため。
そして、市民のため。
理由は違えど、目的はオペラの成功である。
利害関係が一致した、このメンバーは最強、いや、最狂だろう。
保住は、澤井の返答に、話は終いだとばかりに、書類をぐしゃぐしゃに握る。
そして、立ち上がった。
「では、これにて」
「滞りなく進めろ」
「承知いたしました!」
文化課振興課係の面子は、局長室を後にした。
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