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第7章ー4 ご機嫌斜めのお姫様
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「お腹、すきましたね」
「もう1時かあ、昼時間過ぎちゃったなー」
一同は、口々に空腹の訴えだ。
「ズレましたが、ここから一時間の休憩にします。開始は2時から」
「やった」
「係長、ありがとうございます」
「今日は、本当にありがとうございます。みんなの力がなせる技。助かりました」
「今日が山場でしたね。ここまで納得させられれば、あとは進めていくだけです」
渡辺も心底ホッとしたらしい。
「今日は、また寿命が数年縮まりました」
「田口の予算書案、よくできてたな!」
谷口に振られて、田口はタジタジだ。
「いえ、係長の指示どおりに作成しただけですから」
「んなこと言ったって、見やすかったし。局長への説明もなかなかだったぞ」
矢部や谷口に褒められて、それはそれで嬉しいが。
本当は、一番に褒めてもらいたいのは……保住なのだが。
彼をちらりと見ると、携帯が鳴っていたのか。
彼は、プライベート携帯を眺めて顔をしかめる。
「係長?」
思わず心配になって声をかけると、弾かれたように顔を上げた。
「いや、すまない。私用の電話で。先に昼食休憩をしてください」
保住は、そう言うと事務室を出て行った。
「珍しいな。私用なんて」
「女か?」
女?
ドキドキした。
「今日は、終始ご機嫌斜めなお姫様だからな。会議も滞った」
谷口は、肩を叩く真似をする。
みんな気がついていることだ。
「珍しいんだけど、たまにあるよねー。ご機嫌斜め」
「あるんですね。初めて見ました」
「キャパオーバーになるとね。まあ、なにがオーバーさせてるのかの理由は分からないけど」
渡辺が答える。
「仕事でキャパオーバーはありえなそうだし。プライベートじゃないのかな?」
「プライベート、ですか」
呟く。
「しかし、会議が長丁場でどうなることやらだったが、田口の説明でしまったな。お前、係長の右腕になれる素質ありだな!」
嫌味ではなく、純粋に喜んで話す谷口は人がいいのだろう。
「そんな」
「澤井局長に言葉が通じる奴は、なかなかいないそうだぞ」
「でっかく成長してくれて、おれたちは嬉しい!」
渡辺も矢部も泣き真似をする。
困ったものだ。
あまり褒められるのは慣れていない。
田口は、慌てて席を立つ。
「おれ、昼メシないんだった。買ってきます」
「売店は大したの残ってないぞ」
「なんでもいいんで大丈夫です!」
ともかく逃げないと。
そういう思いで、事務所を出ると、階段を駆け下りた。
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