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第8章ー7 好きな気持ち
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湿っぽい飲み会は最悪だ。
3人と別れて歩いて帰宅する。
すでにアルコールが悪さをし始めているようで、頭が痛む。
途中、コンビニでミネラルウォーターを買って飲みながら歩く。
星が綺麗な夜だ。
空を仰いで見る。
マンション下の道路は、先日、みのりたちと会った店が、店じまいをしているところだ。
時間は、深夜になる頃。
金曜日というのに、なんとも寂しいものだ。
白いシャツに、黒いエプロンの男が看板をしまっているのを立ち止まって眺める。
このオシャレな店も、よく知らなかったが、その隣には、古ぼけたバーがあった。
何年も住んでいるのに、気がつかなかった。
水を一口含み紫色に灯った看板を見る。
「ラプソディー?」
昭和のクラブみたい。
流行っているのだろうか。
こういうところは大概、一元さんお断りなのではないか?
ボトルキープとかあるのか。
そんな事を考える。
「関係ないか」
大きい独り言。
かなり酔っているのだろう。
ヒックとしゃっくりが出た。
「なんだ?大丈夫か?」
自問自答して、笑い出す。
なんだ。
おかしい。
笑っちゃう。
「馬鹿みたい」
保住に冷たくあしらわれて、こんなにショック受けるだなんて。
そのこと自体にもショックはあったが、それよりなにより。
こんなにもショックを受けている自分にショック。
ただの上司のはずだ。
ただの先輩のはずだ。
ただの憧れの人なはずだ。
年齢が近い友人まがいの人なはずなのに。
友達でもない。
知り合いでもない。
仕事で同じ部署になって。
年齢がちょっと近いだけで。
それで、それで。
「なんで……」
こんなにも、あの人は自分の心に入り込んでくるのだろう。
まるで。
最愛の人みたいに。
「最愛?」
ハッとする。
「ば、ばかか」
首を横に振る。
何を一体。
馬鹿げているではないか!
「好きなのか?」
言葉に出すと、ますます恥ずかしい。
顔を真っ赤にさせて、居た堪れなくなる。
「は、やだな。変なの」
否定しろ。
自分の気持ちを。
否定しろ。
否定しろ。
なのに。
「違う」のその一言が、出てこない。
「でき、ないのか?」
まさか。
顔を抑えて焦る。
だから?
澤井と連れ立って帰る保住を見て、心が塞ぎ込むのか。
モノクロの世界が彩られるのは、彼がいてくれるから。
それって。
「好き……」
ただの好きではない。
きっと、それは特別な……。
そんなことを考えながら歩き出す。
と、マンションの入り口に見知った男を認めた。
「遅い!待たせるな!」
偉そうな物言い。
よく通る声。
幻聴か?
幻覚か?
追い求めているから。
夢でも見たのか?
「……っ?」
男は、ビニール袋にビールを詰めて立っていた。
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