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第9章ー1 呼び出し
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耳に馴染まない音がして、現実に引き戻された。
眠っていたのか。
目を開けると、しまっているカーテンの隙間から、明るい光が差し込んでいる。
朝か。
身体を起こそうとして、腰が痛む。
はっと、顔を上げると、自分はリビングで眠っていたことに気が付いた。
周囲は、飲み終えたビールの缶が散乱していて、酒臭い。
この音は何?
鳴り止まない電子音に、視線を巡らせると、目の前のソファに保住が眠り込んでいるのを見つける。
そうか。
昨晩は、結局飲み明かしてしまったようだ。
自分は床にごろんとしていたせいで、背中が痛む。
「っ」
痛む背中をさすりながら、音の出所を探して立ち上がる。
電話だ。
しかも、これは。
「保住さん、携帯鳴っていますよ」
保住のだ。
毛布にくるまって眠り込んでいた、保住の肩を揺らす。
「もう少し寝かせろ」
「そんなこと言わないで。携帯です」
留守電にもならない設定なのだろうか。
携帯はしつこく鳴り続けていた。
「保住さん」
「面倒だな……」
毛布から腕だけを出し、携帯を受け取る。
「はい、保住……。なんです。こんな朝から」
だるそうな声。
家族か。
そう思うが、保住の声は低くなり、何やら深刻そうだ。
聞き耳を立てるのも失礼だと思い、ゴミ袋を持ってきて、ビールの缶を押し込める。
結局。
自宅に置いてあったのも出してきて、結構飲んだようだ。
店ではここまで飲まないものだが、
楽しい時間だったのは間違いない。
そんな昨晩のことに思いを馳せていると、電話を終えた保住が体を起こした。
寝ぐせいっぱいで、ひどい有様。
田口は苦笑するが、彼はしばらくぼんやりしていた。
「大丈夫ですか?電話……」
「田口。悪いが、風呂貸してくれ」
「どうぞ。お好きにお使いください」
保住は立ち上がって、風呂場に向かうが、途中、ふと足を止めて振り返った。
「すまないが。連れて行ってもらいたいところがある。昨日の今日で悪いが甘えてもいいだろうか」
突然の申し出に、面食らうが、微笑を浮かべる。
「なんなりとお申し付けください」
「すまない」
ただ事ではないのだろうな。
さっきの電話。
田口はそう思い、自分も出かける準備を始めた。
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