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第9章ー2 一緒に
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保住に指定されてやって来たのは、市内にある総合病院だった。
「ここでしょうか?」
車を置き保住を見る。
「すまなかった」
祖父の件か。
体調でも悪いのだろうか。
来る間も、保住は言葉数少なかった。
そういう時は黙っているのが一番ということも分かっている。
田口は、じっと静かにしていた。
そして、病院に到着したのだ。
「帰りも送ります。おれ、車で待っていますから」
田口はそう言うと頭を下げる。
そんな田口を見上げて、保住は軽くため息を吐く。
「田口」
「はい」
「もう一つ甘えもいいか」
「はい。どうぞ」
「一緒に来てくれ」
保住の願いは、田口にとったら驚きだ。
部外者の自分が?
「あの。おれでいいのでしょうか」
「いい。お前に来て欲しい」
「しかし……」
戸惑う。
こんな大事な局面に自分が?
「願いを聞いてはくれないのか?」
保住は、真剣な眼差しで田口を見あげる。
それに応えなければならない。
そう感じる。
田口は頷いた。
「自分でよければ」
田口の返答に、ほっとしたかのように表情を緩める。
「叔父からで。祖父の容態が悪いと言うのだ。やはり、一目も会わずにあの世に行かれたのでは、おれの心が戸惑う」
「それはそうですね」
「気持ちは乗らないが、仕方がない」
「はい」
前回、叔父からの電話で聞いていた病室に向かって歩みを進める。
いつもだったら、颯爽と歩く彼だが、気が乗らない気持ちが全面に出ている。
いつもよりもスローペースで歩く彼の斜め後ろを、ゆっくりと歩いて着いていった。
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