アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第11章ー4 おばあちゃん
-
心の中は嵐。
嫌なことばかり駆け巡る。
まさか、自分が保住と付き合えるなんて思ってもみない。
男同士だからだ。
天地がひっくり返っても無理。
分かっていた。
だから静観していたのに。
同じ男である澤井が、保住と寝たと聞いて、心穏やかにいられるはずはない。
男でもいいなら、何故自分ではないのだ。
誰にも負けないくらい、あの人が好きなのに。
仕事も手につかないが、周囲は昨晩の疲れだろうと理由付けてくれた。
定時になり、片付けをして退勤する。
保住は、いるだろうか?
メールをする勇気もない。
事情もよく分からないのに、自宅に連れこんで。
休みまで取らせて。
顔向けも出来ない。
余計なお世話ばかり。
嫌な思いばかりさせているのではないだろうか。
だけど、心配で仕方がないのだ。
ちゃんと寝ているだろうか。
自宅に帰ってしまっている可能性も高い。
だけど、いたらどうしよう?
夕飯。
何か考えないと。
行き着けないスーパーでウロウロしていると、レトルトのお粥が目に入る。
「粥か」
体調が悪い時にはいい。
二日酔いには、お茶漬けだ。
レトルトに手をかけると、ふと下から視線が向いていることに気がつく。
はっとして見下ろすと、そこには小柄な老婆が立っていた。
「具合が悪い人でもいるのかい?」
彼女は、カートを押したまま、田口の隣にいた。
びっくりした。
慌てて、掴んでいた粥を落としそうになり、掴み直してから元に戻す。
「知り合いが、体調が悪くています。何を食べさせようか悩んでいました」
素直に白状すると、老婆はニカッと笑う。
「体調が悪い時は、喉越しが良くて栄養価が高いものでないといけないよ。レトルトの粥もいいが、プラスアルファしなくっちゃ」
「はあ……」
それから数分。
田口は、おばあちゃんの知恵袋レクチャーを受けた。
結果、とりあえず良さそうなものを買い込んで見たところ、スーパーの袋二つ分にもなった。
そもそもが料理をしていないから。
一から揃えるとなると、このくらいになるのは当然だろう。
自分でもいかに料理をしていなかったか、明らかになってがっかりだ。
ガサゴソと荷物を携えて自宅に帰る。
玄関を開けると、中は真っ暗だ。
保住は、帰ってしまったのだろうか?
そんな不安を、覚えて照明をつけると、彼の靴が揃えて置いてあった。
まだいるらしい。
寝室を覗くと、今朝、置いていったまま彼は眠っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
120 / 344