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02 雨夜1
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朝から不調だった。
お酒が好きな蒼にしては、二日酔いは、珍しいことだった。
頭はずきずき痛むし、なんだか気分も悪かった。
朝陽を浴びている星音堂の外壁が妙に光っていて眩しい。
ともかく、気分が悪かった。
「おいおい、お前、何時まで飲んでたの」
そんな様子を見かねたのか。
隣の席の星野は笑う。
「朝まで付き合わされました……」
「ははは。女の方が一枚上手だ。余計な駆け引きはしないこったな」
蒼の目の前に座っている吉田も「同感」と笑った。
「言えますね」
吉田は、蒼の次に若い。
ここでは一番年の近い先輩が新人教育を担当することになっている。
だから、蒼の担当はこの吉田と言う男である。
彼は、人がよさそうな男で、いつもにこにこ冗談を飛ばしていた。
2年経っても、彼にはお世話になりっぱなし。
新人から抜け出せないのだから、下っ端面しているしかないのだ。
星音堂は、市役所の中でも特殊な部署だった。
職員は男ばっかりの7名。
課長の水野谷をはじめ、年の順に氏家、高田、星野、尾形、吉田、蒼となっている。
上から順に退職にならない限り、新入職員は入って来ない。
つまり、氏家が退職しない限りは蒼の下には新しい子が入って来ないと言うことだ。
氏家の退職は来年の予定だから、後2年はこのまま下っ端の扱いだろう。
吉田もそれくらい新人で頑張ったと聞いている。
蒼が入って来た時、かなり喜んでくれたようだ。
下っ端脱出だもの。
別に、下っ端が悪いわけではない。
責任もないし、気楽なことには間違いない。
ただし、職務は多い。
普通、女性職員や臨時職員がこなす仕事も一緒にしなければならないからだ。
コピーやお茶をいれたり花に水をあげたり……。
雑用係みたいなものだった。
早く先輩になりたいな。
そんなことに思いを馳せていると、尾形が吉田をからかう。
彼の趣味は、吉田をからかうこと。
蒼の斜め前の先輩だ。
「お~、吉田。なになに~?知った口利いてんじゃん」
「な、たまにはセンパイぶらせてくださいよ。尾形さん」
「弁当おごりで、やらしてやってもいいぞ~」
お茶を飲みながら、尾形は笑う。
そんな尾形を見て「まだ食うのか」と水野谷は、突っ込みを入れた。
「げ、今太っている奴は食うなとか思いましたね~!課長」
「ばれたか」
水野谷は、眼鏡をずり上げる。
彼は陽気だ。
仕事には厳しい課長だが、職員と共に雑談に混ざる。
星音堂の仕事は、忙しいが、水野谷がこんな調子なので、雑談をしながらも多い。
のらりくらり的な上司ではあるが、立場から言えば、なかなか仕事が出来ると評価されているようだ。
課長と言う役職であるが、一施設を管理する責任者。
等級的には、次長クラスらしい。
しかも、人の良さ。
学習院卒のおぼっちゃまらしい。
道理で、と言うところだ。
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