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02 雨夜5
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「おれ、なんかしましたか?睨むし……」
最初は意気揚々としていたのに。
結局、最後は言葉が消えそうでよく聞き取れなかった。
困った顔の蒼は俯いてしまう。
長身の関口からはよく顔が見えないけど、言ってしまって後悔したと思っていることは容易に想像が出来た。
そんな蒼を見ていると、先ほどのもやもやした想いが顔を出す。
苛立ち。
自分よりも年上のこの男。
関口の安寧の場所に無断で入り込んできた男。
イラつく。
からかってやろうと思った。
「睨むなんてとんでもない。なんだか小さくて可愛いなぁと思って」
「は?」
か、可愛いって?
ちょっと待てと蒼は顔を上げる。
「お年はお幾つですか?そうだ。お名前も聞いていませんでしたね。ああ、ご趣味も是非聞きたいですね。あなたのこと、もっと知りたいな」
「は?あの……」
蒼には趣旨が見えない。
まくしたてられて、目が回っている。
真っ黒な瞳には明らかに動揺の色が浮かんでいた。
困った顔の蒼は、関口にしてみれば面白い。
もっと困らせたい。
どうしてだろう。
そう思った。
「おれと、お付き合いしていただけませんか?」
「あ、あのっ!は?ええ?な、なに?」
とどめの一発である。
蒼は、くらくら眩暈がした。
自分の理解を超えた内容の話に頭がパンクしてしまったようだ。
おろおろと情けなく反応している彼を見て笑ってしまう。
「本当に可愛いですね」
「……っ?」
「冗談ですよ」
「へ?」
「冗談に決まっているじゃないですか。なんで、おれが男のあなたに告白しなきゃならない?」
意地悪に微笑む関口から視線をそらし、蒼は顔を赤くした。
恥ずかしかったらしい。
動揺した自分が馬鹿みたいだ。
「ひ、ひどい!」
この場所にいるのは、いたたまれないだろう。
半分泣きそうな顔をして、練習室を出て行ってしまった。
「き、嫌いです!」
ぱたぱたとサンダルを鳴らして走り去る蒼を見送って、関口は更に笑う。
苛立ちの原因である彼を困らせることですっとしたらしい。
「からかうと面白いな……。あの人」
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