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02 雨夜9
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「あはははは!うさぎですか」
「わ、笑うな!」
懐中電灯を振り回して怒る。
だけど関口の爆笑は止まらなかった。
「うさぎって……女子高生か」
「う、うるさい!」
いつまでも笑っている関口。
ちっともいい奴じゃない。
最初から最後まで頭に来る男だ。
蒼はいい加減にしろ!とばかりに口を開く。
「あのねえ、いつまで笑って……」
「あった!」
「え?」
「ありましたよ」
蒼が闇雲に懐中電灯を振り回したおかげで、少し離れているところにおちていたピンク色のうさぎを発見したらしい。
関口は、慌てて駆け寄り、うさぎを持ち上げる。
うさぎはみすぼらしく汚れて濡れていたが、確かに蒼のものだった。
「や、やった!」
彼の手から受け取ったうさぎ。
蒼は思わずぎゅっと握り締める。
鍵は、もちろん大切な探し物だ。
だけど、本当に見つけたかったのはこの子。
この雨の中、自転車だって歩いたって同じことだから、鍵がなければここにおいていけばいいだけの話だ。
鍵だって、自宅に帰ればスペアーがある。
だが、このうさぎにスペアーはないのだ。
一晩中、雨に濡れて真っ暗なところで過ごすこの子のことを考えると、不憫でならなかったのだ。
良かった。
帰る前に見付かって。
「良かったですね」
蒼の笑顔を見ていると、関口も思わず微笑む。
ドジな年上の男。
むかついたり、苛立ちをぶつけてからかったりしたけど。
どうして気になるのだろうか?
放っておけない?
そんな感じがしたのだ。
関口もまた、不思議な感覚に襲われていた。
引きずり込まれる?
そんな感覚。
目の前でうさぎを見つめて嬉泣きをしていた蒼。
彼は思わず関口に飛びついた。
「本当にありがとう!関口!」
不意を突かれたその行動に、さすがの彼もびっくりした。
しかし、ふと冷たくなった蒼の感覚に安心感を覚える。
そっと手を回して彼を支えた。
「よかったですね」
「ありがとう……。本当に。関口、さん」
いつの間にか呼び捨てになっていたことに気づいたらしい。恥ずかしそうにしている彼を見て、関口は笑う。
「呼び捨てで結構です。あなたの方が年上だ」
「え……」
そこで自分の行動に気づいたのか。
蒼は、はっと瞳を見開いて関口から離れた。
「ご、ごめん!関口もびしょ濡れになっちゃったね」
「平気ですよ」
飛び込んできたかと思ったら離れていく。
ふと彼の温もりが残っている手を見つめ、関口は笑った。
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