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04 雨の日の再会6
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「酒は?」
「へ!?車でしょうが!」
一口食べたところで吹き出す。
「なんだ。泊めてくれないのか?」
「な、また泊まる気してんの?」
「おかしいな~。看病してあげたのに」
またそれ?
弱みを握られた!!
優しい男というのは蒼の気のせいだったらしい。
一度掴まえたら離さない蛇みたいな男だと思う。
「ちょっと!あのね。はっきり言いますけどね。おれはキミよりも年上で……」
むんむん怒って言ってやろうと意気揚々と切り出したのに。
途中で、関口は話の腰を折る。
「この前、日本酒が入っていたよな~」
「は!?」
蒼を取り残して、彼はさっさと冷蔵庫から日本酒を出してくる。
「よし」
「よし、じゃないよ~!」
「でさ。相談なんだけど」
聞いてない!
まるっきり無視!
頭にくる。
蒼は、むっとしてフォークを手に取った。
そんな彼の様子なんてお構いなしで話しを進める関口。
「今度、ヴァイオリン協会の講師を頼まれたんだよね」
「ヴァ、ヴァイオリン協会……?」
自分も無視してやろうと思ったのに。
つい返答してしまう。
言ってしまってから口を押さえても後の祭りだ。
彼は、にっこり笑って話しを続けた。
「星音堂に勤務していて知らないのか?」
「知っているよ!日曜日に朝から夜までやっているやつでしょう?東京から偉い先生とかを呼んで来て地方の子どもたちを育成するって……へ?」
東京からの偉い先生?
偉い?
誰が?
蒼は、しばらく考えてから関口を見つめる。
「……って!すごくない!?偉い先生?関口が!?」
身を乗り出してびっくりする。
大きい彼のリアクションに、関口は呆れる。
「あの。偉いの意味が分からないんだけど……」
「だって星野さんが言っていた。レベル向上を目指した試みだって……。地方では腕のいい先生に習えない子も多いから、チャンスを作るために県のヴァイオリン協会が主催しているんだって」
そういう情報はきちんと入っているらしい。
星野がいるのだから当然か。
音楽に関してはど素人だろうけど、少しは話が分かるな。
関口は、そう思った。
「それの内容はどうでもいいんだ。問題はここから。その仕事を引き受けることになると、おれは週に3回もここと東京とを往復しなければならなくなるんだ」
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