アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
05 二人3
-
「ぐ~……。眠い……」
関口は、目を擦りながら身体を起こす。
蒼が行ってしまってどれくらい経つのだろうか。
朝、蒼がバタバタしていると自分も安眠できない。
蒼が感じているのと同じで、関口もまた、二人で生活すると言うことの大変さを実感していた。
今までが気まますぎたのだ。
自分から言い出したことなのに。
「は~」
大きく息を吐いて手を伸ばす。
何時だ?
携帯を探るべく、手をばたばたと大きく振る。
まだ一週間と言うこともあって使い勝手も分からない。
狭い部屋なので、食事をしたりするときに使うテーブルは、ベッドのすぐ横だ。
少し上体を起こしてそちらまで手を伸ばすと、暖かいものに触れた。
なんだろう?
「?」
それは包み。
ああ。
そっか。
関口は、苦笑する。
これはいつも蒼が準備していってくれるお弁当だ。
資金も大変だし、贅沢はしないようにしたほうがいい。
そう蒼は言っていたっけ。
ふと彼の顔を思い出して笑ってしまう。
大して話す事もないし。
関口はマイペースだから、ここにいるときは楽譜を眺めたり、音楽のことを考えている。
蒼は、そんなにテレビを見る子ではないみたいで、関口にとったらそれは好都合なことだった。
静かな環境で物思いにふけることが出来るのはいいことだった。
蒼はと言えば、いつもごろごろして寝ているか、本を読んでいるかのどちらか。
ちょうどいいのだ。
こういう空間。
ただ、彼は時々、居心地が悪そうにおたおたしているけど。
沈黙をなんとかしようと気を使っているのだと言うことが見て取れた。
そんなことしなくていいのに。
関口にとったらこの空間と雰囲気が好きなのだから。
それはこの場所がどうこうとかって言うのではなく。
きっと蒼のおかげなのだろうと思っている。
星音堂の事務室が変ったように。
ここもまた、心地いい空間になっているのだ。
「あいつ……」
ベッドに座り込みお弁当を見つめる。
自分の選択は間違っていなかった。
ふと変な確信が生まれる。
蒼でよかったのだ。
きっと。
彼は、自分に安寧をくれる。
そんな気がしてならないのだ。
思わず笑みが洩れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 869