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07 決意の休日7
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安堵すると、今度は恥ずかしい気持ちがむくむく出てくる。
一人でおたおたして、なにを焦っていたのだろうか。
あんなに迷惑だと思っていたのに。
「……あのさあ。蒼」
「な、何!?」
一人でもやもや考え込んでいたから、関口の声が妙に大きく聞こえてびっくりする。
蒼の異様なリアクションに関口もびっくりしていたが、何かを思いつめているのか、真面目な表情をした。
どっきりする。
何?
蒼は、どきどきして関口を見つめ返した。
「勝手に居候決め込んで本当に悪かったと思っている。だけど、また勝手に決めてしまったことがあるんだ」
「え……?」
いったいなんの話?
勝手に決めるのはいつものことだし。
それに、蒼に話をすると言うことは自分にも関係のあることなのか?
彼は、突拍子もないことを言い出してばかりだからいやになる。
心臓がいくつあっても足りない。
「な、何……?」
恐る恐る訊ねる。
関口は、フォークを置いて、蒼のほうに身体を向けた。
「おれさ」
「うん?」
「おれ。2ヶ月後のヴァイオリンコンクールに出る事にしたんだ」
しばらくの沈黙。
蒼には、言葉に意味がよく分からない。
関口がコンクール?
「……え?」
瞬きをして意味を理解しようと思考をめぐらせる。
関口は、今までに見たこともない自信がなさそうな顔をしていた。
「おれさ。コンクールってものから逃げていた口でさ。最後に出たのは、子どもの頃なんだよね。大人になってからのコンクール挑戦は始めてで。すっごくかけているんだ。このコンクールに」
「逃げていたって……」
「これを突破口にして、コンクール恐怖症から脱出したいわけ」
コンクール恐怖症?
蒼は、口をぱくぱくさせていた。
「恐いの?コンクールって」
「まあ、いろいろね。その内、蒼には話すつもりだけど。だけど、コンクールに出ることになると、いろいろと迷惑をかけることになると思うんだ」
「どうして?」
「だってそうだろう?おれは我儘だし。精神的にまずくなると、更に我儘になるのは自分でも分かっているんだ。もしかしたら、蒼にすごく迷惑をかけてしまうかもしれない」
「関口……」
我儘だっていうことは、自分でも理解しているのか。
これ以上、彼が我儘になったら大変だなと内心思う。
しかし、彼は何かを克服しようと決心したのだ、
それを考えると、蒼にはやめさせる権利はない。
それに、こうして自分に許可を求めてくるのだから、自分は同居人として認められているのだろうと思われた。
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