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09 甘くない桃2
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「誰だろう……」
こんな遅くに……。
時計に視線を向けると、22時30分だ。
ありえない。
なにかの勧誘とかでもないだろうに。
来客はない家だ。
瞬きをして声を上げる。
「どちら様ですか?」
しかし反応はない。
覗き穴から見てみると、女性が立っているのが見えた。
間違っているのではないだろうか?
相手が女性と言うこともあって、少しほっとして玄関を開く。
髪の長い、すらっとした美人が立っていた。
蒼とは、縁がないようなタイプの女性。
なんだか緊張した。
彼女は蒼を見ると、一瞬怪訝そうな顔をして手にしていたメモに視線を落とした。
「あの……。どちら様ですか?」
人違いと言うところだろう。
どうしていいのか分からなくなって、蒼はおろおろと女性を見つめていた。
彼女は、無愛想である。
「圭は?」
挨拶も抜きでそう言った。
「え……?」
「圭を出せって言っているの!」
表情を険しくしているものの、整った彼女は綺麗だ。
蒼の周囲には存在しない系統の女性。
思わず見入ってしまっていた。
ぼけっとしている蒼では話にならないと思ったのだろう。
女性は、蒼を乱暴に押しのける。
ぼんやりしていたせいもあって、軽々と壁に身体を押し付けられた。
「ひゃ!」
「上がらせてもらうから」
ヒールの高いパンプスを乱暴に脱ぎ捨て、ずかずかと奥に入っていく女性。
慌てて追いかける。
「あの!関口はいなくって……」
彼女は、中を見渡してから関口がいないことを確認し、座り込んだ。
「待たせてもらうわ」
おろおろとしてみても、彼女は微動だにしない。
蒼は、諦めてため息を吐く。
いくら押しかけた客とは言え、お茶も出さないではいられない。
しぶしぶキッチンに向かい、やかんを火にかける。
関口とは、どんな関係なのだろうか?
圭?
名前で呼んでいた。
親しい間柄なのだろう。
こちらには、中学校までいたから友人も多いと言っていた。
あまりに整いすぎた顔は、冷淡な感じすら伺わせる。
彼女の正体について考える。
沈黙が訪れ、彼女も落ち着いてきたらしい。
我に返り、蒼のことを不思議そうに見つめた。
「そういや。あんた誰?」
今頃?
蒼は、瞬きをして彼女を見る。
「え!おれ?ここはおれの家で……」
しどろもどろだった。
やかんがシューシュー音を立てているのすら耳に入って来ないくらい焦っていた。
「あんた、圭の何?」
「な、何……って……」
友達と言っていいのだろうか?
知り合い?
いや、一緒に住んでいるのだから、知り合いの域は出ているだろう。
では何なのだろうか。
お互いのことすら、まだよく分からないのに。
こういった関係を友達といってよいのだろうか……。
一体、自分は彼のなんなのだろうか。
そう考えると、めまいがしてきた。
誤魔化しの言葉も出ない蒼を、不審そうに女性は見ていた。
「怪しいな」
「へ?」
「どういう関係なのよ。あんたたち」
初対面で「あんたたち」呼ばわりとは。
蒼が声を上げたのと同時くらいに、玄関が勢い良く開いた。
「ただいま」
関口である。
彼は、キッチンでおろおろしている蒼を不思議そうに見つめていた。
「何してんだ?蒼」
「あ、あの。お客さん」
「へ?」
ヴァイオリンを置き、室内に入った彼は女性を見て笑う。
「なんだ。桃。来ていたのか」
彼女は、意地悪な表情で関口を見上げる。
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