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11 口づけ3
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回診が終わり、お昼近くに看護師がやってきた。
食事を摂れないから高カロリーの輸液をすると言う。
その輸液は、抹消の細い血管からは入れられないので太い静脈に刺すといわれた。
なんだかよく分からないけど、梶川に任せるしかない。
彼女の持ってきた同意書にサインをすると、早々に梶川がやってきてラインの挿入が行われた。
首の付け根から入れられたそれ。
麻酔をしたとは言え、普段そういうことになれていない場所への挿入は痛みを伴った。
麻酔が切れてくるとジンジンする。
ラインが抜けてしまわないように縫い付けられている糸が、引きつっていた。
「痛い……」
左頚部を押さえて、うずくまる。
呼吸も苦しいし、痛いしで踏んだり蹴ったりである。
なんだか昨日から。涙が良く出る。
情けないせいなのだろう。
目が潤んで、そんなに悲しくもないのに、少し気を許すと涙がこぼれた。
家族にはどうしたらいいのだろうか?
やっぱり連絡しないとまずいだろうな。
心配はかけたくないし。
最近では、ほとんど連絡も取っていないから気まずいのだ。
「は~……」
枕に身体を預けたまま外を眺める。
青い空。
夏の日差しだ。
白い雲を見ると梅雨は明けたことがよく分かる。
みんなどうしているだろうか?
今日、落ち着いたら水野谷に連絡を入れることになっていたが、この分では公衆電話のあるところまでいけそうにない。
夕方にしようかな?
それに、関口。
彼の練習ははかどっているだろうか……。
あんな置手紙だけでよかったのだろうか?
携帯で連絡を取ろうと思ったけど、彼の番号を知らないことに気づいてがっかりした。
自分がいないほうがいいだろう。
あんな狭い空間にいれば気を使うだろうし。
ちょうど良かったのかもしれない。
「入院してよかったんだよね」
こんなにみっともない姿を関口に見せられない。
ぼんやりと真っ白な壁を見詰めていると廊下が騒がしくなる。
なに?
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