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14 役不足1
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祝賀会。
コンクールのその日。
柴田の自宅に招かれた関口。
側には蒼がいた。
桃のことも誘ったが、彼女は用事があると辞退したのだ。
柴田の妻が野菜を載せた皿を持ってリビングに入ってきた。
中ではプレートを囲んで柴田と関口が嬉しそうに焼肉を食べていた。
「さあ!どんどん食べてね!」
目の前に並んでいる大きな皿たちを見つめて蒼はため息を吐く。
「あの。おれはもう……」
しかし、元気な柴田と関口にとったら、なんのこれしきである。
二人は次々に焼きあがった野菜や肉をほおばった。
「肉をもう少し持ってきてくれ」
「はい」
柴田の言葉に笑顔で出て行く妻。
「……」
まだ食べるのか……。
蒼はがっくりきてソファに寄りかかる。
もぐもぐしながらも二人の会話は弾む。
「しかし。蒼とはね」
柴田の言葉の真意を蒼は知らない。
たくさんの食材を見ただけで少々気分が悪い。
なにせ病み上がりなのだから。
「まあ。良いじゃないですか!先生。さあ。食べましょうよ」
関口はごまかすように豪快に笑って、彼に日本酒を勧める。
柴田は日本酒派だ。
そういう蒼もだが……。
今日は遠慮しておこう。
身体が本調子ではないのだから。
せっかくの関口の祝賀会だけど。
自分は辞退。
そう。
今日のコンクール。
関口は見事グランプリを頂いた。
川越が一押ししてくれたらしい。
それでなくても満場一致で一位だったみたいだけど。
これは星野情報である。
こういう審査委員のやりとりまで情報として入ってくるのだから彼はすごい。
帰りがけ、ちゃんと休んでから出てくるように釘を刺された。
だから帰ったら横になろうと思っていたのだが。
結局、柴田からの誘いが断りきれなくて付き合う羽目になってしまったのだ。
柴田とは星音堂を通して顔見知りである。
水野谷を交えて飲みにも行った事があった。
しかし、彼の自宅にお邪魔をするのは初めてのことだった。
奥さんもいい人だし。
暖かい夫婦で羨ましい。
蒼は酔っ払って騒いでいる二人を残し、キッチンにいる妻のところに行く。
「あの。おれやりますから食べてください」
「あら。いいのよ。お客さんなんだから」
「でも。これって、おれたちがご馳走になるのじゃなくて、お世話になったんだからご馳走しなくてはいけないところですよね」
蒼の言葉に妻は笑う。
「本当はね。でも今日は圭くんの祝賀会だし。彼をもてなす趣向だから大丈夫だよ」
彼女は嬉しそうに笑う。
そして蒼を見つめた。
「蒼ちゃんって、女の子よりも気が利くのね。お嫁さんに欲しいくらいだわ」
「嫁って……」
キッチンで並んで立ち話とは嫁姑のようだ。
「なんだか、すみませんでした。ほとんど毎日、夕食ご馳走になっていたみたいで」
「気にしないで。あたしも多い方が作り甲斐あるし。そうそう。今度は二人でいらっしゃいよ。待っているからね」
「すみません……って。そうではなくて……!」
話ついでに彼女のお手伝いで野菜を切り分ける。
「あら。珍しい切り方ね」
「昔、母がよくやってくれたので。ついクセで。すみません」
「綺麗じゃない。どうやるの?」
「これはですねえ……」
いつの間にかキッチンで盛り上がっている二人を見て柴田は嬉しそうだ。
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