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14 役不足4
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なんだかぎくしゃくしてしまう。
関口は不思議そうに蒼を見ていた。
熱を帯びた視線。
なんだかそれも窮屈だった。
「どうした?蒼?」
「え……。ううん。……なんだか。関口のお父さんとお母さんがすごい人だって聞いて。それで、すごくビックリしちゃって」
「……確かに家の親はすごい。自分の親なのにそう思っちゃうくらいなんだから、すごいんだと思う。でも、おれはおれだし。……まさか。気にしてんのか?」
「え!ううん。違うの。なんだかね、なんだか、関口が別の世界に住んでいる人に見えたんだ」
「蒼……」
関口は目を瞬かせて蒼の腕を引き寄せる。
「わわっ!」
態勢を崩し、蒼は関口の方に倒れこんだ。
「おれは。今までと何も変わらない。考え方も思いも……」
関口は熱い。
酔っているからだろう。
ひんやりしている蒼は心地よかった。
「おれ。蒼のこと……」
関口の言葉を遮ぎるように、蒼は声を上げる。
「関口!」
「蒼?」
「ごめん……」
彼は俯いていた。
「ごめんって……。どういう意味……?」
「おれには、そんな資格ないんだ」
「蒼……?」
関口の上に覆いかぶさるようにしていた蒼。
視線をそむける。
「なんて言うのかな。おれでは、関口のパートナーとして役不足だよ。平凡で。なんのとりえも無いし……。ほら、関口には、もっと素敵な音楽が出来る人とか……っ!わわ!」
もごもごといい訳をしていたのに、急に視界が反転して言葉を失う。
なにが起きたのか。
瞬きをして気が付くと、いつのまにか関口の下に組み敷かれていた。
「関口……!?」
「蒼……。嫌いなら嫌いってはっきり言えよ。遠まわしはやめてくれ」
「そ、そうじゃなくて……」
「役不足って誰が決めてんだよ?そういうのって本人たちが決めていくものなんじゃないのか?おれには、そういうことは関係ない。おれは蒼、が好きなんだよ。おれは蒼がいればいいんだ。蒼だけでいい。蒼以外の人間だったら、いないほうがましだ」
なんでなんだろう?
卑屈で捻くれた考えの自分。
こんなに嫌な奴なのに。
どうして、ここまで必要としてくれているのだろうか?
こんな自分でも抹消してしまいたいくらいに嫌な奴を……。
どうして関口は好いてくれるのか?
蒼には理解できなかった。
「好きだよ。蒼……。キミがいないと、おれはやっていけない」
『お前なんか、好きになる奴はいないんだ』
『誰も信じるな』
頭の奥底で響くその声が大きくなる。
自分はどうしたいのか?
関口が好き。
好き?
だけど、関口を不幸にしてはいけないのだから。
「蒼?」
堪らず涙が溢れた。
彼の強い愛情を受け止めきれない。
言葉を失い、ただ泣くことしか出来ない。
嗚咽を漏らす蒼を関口は優しく抱き締めてくれた。
涙で疲労は濃くなる。
「ごめん。今日はもう眠っていいんだよ。疲れているのに無理させてごめん」
どうしたらいいのか皆目見当もつかない。
気持ちを落ち着かせようと瞳を閉じると意識は薄らいでいく。
どうしたらいいのだろう?
どうしたら……。
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