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◾️献血トラブル1
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朝礼が終わり、星野が張り出したポスター。
『第115回 NNK交響楽団定期演奏会』
蒼は、昼食後にじーっと眺める。
ポスターの上の方には大きく初老の男の写真が載っている。
『指揮者:関口 圭一郎(NNK交響楽団常任指揮者)』
「関口のお父さんが来るんだ……」
これが関口の父親。
世界的に有名なマエストロ。
きっとした表情は関口に似ている。
長めの髪を後ろに流し、燕尾服を着ている男。
関口と同じ。
眼鏡が似合っている。
ぼんやりそれを見ていると、吉田がやってきた。
「蒼~。みんなもうやってるよ」
「あ、すみません」
関口は、どう思っているのだろう。
彼が来ることを知っているのだろうか?
蒼が外に出て行くと、星音堂の前には大きな献血車が止まっていた。
今日は年に1回やっている献血デー。
星音堂職員のみならず、近所の病院の職員や『ソラマメ』の人たちもやってきていて賑やかだ。
「お前、一番若いんだから。頑張れ」
星野は、にこにこしている。
どうせ綺麗な看護師でもいたのだろう。
上機嫌だ。
「私は左がよく見えるのだが……」
水野谷はもうすでに終わって出てきたようだ。
右を刺されたと文句を言っている。
献血のベテランだ。
「ほれ、さっさとやって仕事だ、仕事」
水野谷に急かされて、蒼は慌てて受付に走る。
ボランティアのおじさんは、にこにこして対応してくれた。
「問診票に記載してください」
このご時勢だ。
献血も大変なのだろう。
「血は県単位でまかなっているのだ。お前も!もしものときのためにしっかり献血するんだぞ」
星野が隣にやってきて一生懸命説明してくる。
「え?そうなんですか?」
「そうなの!ここの県で不足した場合は他県から血を借りるんだ。そんで、後で返すて言う仕組みになってるんだから。自分の県は自分で守る!それが県民の務めと言うものだっ」
どこからそういうネタを仕入れてくるのだろうか?
側にいた看護師たちは「お詳しいですね」と笑っている。
女性に囲まれて上機嫌だ。
本当に星野はお調子ものなんだから……。
蒼は呆れて無視することにした。
そして問診票を書き始める。
現在内服中の薬についての質問がある。
「そういえば……」
喘息の薬も飲んでいるし。
今年は、無理かも知れないな。
いそいそと記載を進めていき、そして最後の質問で詰まった。
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