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◾️献血トラブル2
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『この一年間に次のいずれかに該当することがありましたか
(該当する項目を選ぶ必要はありません)
1不特定多数の異性と性的接触を持った
2男性の方:男性と性的接触を持った』
蒼は、ぽかんとしてしまった。
やっぱり。
まずいことなのだろうか。
なぜだめなのか……。
感染症の問題なのだろうが……。
誤魔化してもよいものなのだろうか。
だけど自分が嘘を書いて、大事件に発展したりしないだろうか。
「他には?」
項目は全部で4つだ。
そのどれかに当てはまれば丸をつけることになっている。
他の問題で差し障りのないものであれば迷わず丸がつけられるはずだ。
蒼は、慌てて他の質問に視線を落とす。
しかし、残されたものはどれも気まずい質問ばかりだった。
『3エイズ検査(HIV)で陽性といわれた。
4麻薬、覚せい剤を注射した』
どれもやばい項目ばかりだ。
この質問で「はい」に丸をつけた時点でどれも犯罪めいていないか?
どうしてこういう質問を載せるのだろうか?
普通、当てはまっても正直に丸をつける奴がいるとは考え難い。
なんだか混乱してきてめまいがしてきた。
「どうした?蒼?」
いつまでたっても記入が終わっていない蒼に不審を抱いた星野がやってきた。
「星野さん……」
「?」
「あの。おれ……」
泣きそうである。
そんなに見つめられても困ってしまう。
星野は苦笑して蒼の問診票を覗き見た。
そして、詰まっているところを確認すると面白そうに笑みを浮かべる。
「後でおれの質問に答えるか?そしたら助けてやってもいいぞ」
パニックに陥ってしまっている蒼は大きく頷く。
「なんでも答えます!」
「よく言った」
にんまりと笑い、彼は蒼の問診票を取り上げる。
そして、さっきまでいちゃいちゃしていた看護師に声をかけた。
「すみません。あの子、喘息で。現在薬を内服しているんですが……」
彼女は問診票と蒼を交互に見比べて、申し訳なさそうな顔をした。
「申し訳ありません。喘息の薬は血液に影響を与えますので、そう言う方はお断りさせていただいているんです」
「何だ。蒼はだめなんだってさ」
星野はニヤニヤしながら蒼の元にやってきた。
一難去ってまた一難か。
しょんぼりしていると、献血を終えた吉田がにこやかにやってきた。
「こんなすっきりすることができないなんて……。可哀相だな」
彼も水野谷同様、献血マニアかもしれない。
血を抜かれることが、そんなにいいことなのだろうか?
なんだか蒼からしたら、水野谷と吉田は異色だ。
献血フェチとしか言いようがない。
しょんぼり座り込んでいると、あっちのほうで星野が手招きをしている。
いろいろ聞かれるんだろうな。
助けてもらったから仕方がないけど。
初めから自分もそうすればよかったのに。
気が利かなかった。
ため息を吐いて星野のほうに歩き出す。
自分と関口のことはおおぴらにはできないことなんだなと実感した。
人の道から反れたことなのだろうか?
星野は、よき理解者だから話すことは出来るけど。
二人の関係は、秘密のことだ。
誰にも言えない。
秘密。
なんだか重い荷物を背負った気分だった。
もし、このことがバレたら、職場にだっていられなくなるかも知れないし。
それだけ社会的に問題なことなんだと思う。
気分が暗くなった。
だけど。
そんなことになったとしても、自分は関口と一緒にいたいと思った。
彼のことを本当に好きかどうか、まだ揺らいでいる気持ちが大きいが、側にいたいと言う思いは嘘ではない。
どんなことになろうと、蒼は関口と一緒にいたいと思った。
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