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17 嵐到来3
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蒼を星音堂に残し、一足先に帰宅した関口。
車から降りて首を傾げた。
二階の端の部屋……。
明かりが着いている。
今朝、電気を消し忘れたのだろうか。
喧嘩をしていたから動転していたっけ?
いや。
電気の消し忘れはないはずだ。
蒼はしっかりしているもの。
無用なコードまで抜いているくらいだ。
だとしたら泥棒……?
しかし、堂々と明かりを着けるはずは無い。
さも「泥棒がいますよ」と言っているようなものだ。
「……?」
不審気に部屋の扉に手を沿える。
ノブとそっと回してみるとスムーズに回った。
鍵も開いていると言うことか?
怪しい……!
蒼に電話をするべきか……。
蒼の友達……?
いや。
彼は何も言ってはいなかった。
覚悟を決めて、関口は玄関を思いっきり開ける。
泥棒だったら掛ってきやがれだ。
「誰だっ!!!」
「あら」
中を見て関口は目が点になる。
「圭。遅かったのね。お帰りなさい」
玄関を入ってすぐのキッチンに立っていた女性は、母親のかおりである。
彼女は、蒼のエプロンをして料理をしている最中だった。
「か、母さん……?」
「しばらく待っていたんだけど、あんまり遅いから管理人さんに言って鍵を借りたのよ」
室内はいい香りが充満していた。
これは、母親特製のビーフシチュー。
夏にそりゃないだろうと思うかもしれないが、関口の大好物だ。
彼女がここにいると言うことは……。
おまけがいるはずだ。
おそるおそる室内に視線を向けると、「やっと帰ってきたな」と長身の男が手を振っていた。
この世の中で一番嫌いな男。
関口は、む~っとして室内に入る。
彼は勝手にテレビを付けて寛いでいた。
「なにしてんだよ、あんたたちは……」
「なにって。この町に来るのは久しぶりだからね。かおりも来たいって言うし」
彼はあくまでにこやかだ。
子どもに「あんたたち」呼ばわりされてもケロっとしている男。
かおりも満面の笑みで室内に顔を出した。
「こんな機会じゃないと、来られないじゃない?こっちに遊びに来てもお家もないでしょう?圭の住んでいるところも見てみたかったし……。男の子と住むって言っていたけど。ずいぶん家庭的でビックリしちゃったわ。心配だったのよ?ろくなものを食べて無いんじゃないかって。ねえ」
「そうそう」
本当に心配しているとは思えない。
今まで放置に放置を重ねたクセに!
「蒼は料理上手だから不自由してないから……っ!」
「蒼ちゃんって言うの」
「ぐ……っ!」
かおりは手を叩く。
「可愛らしい名前!本当に男の子なの?」
やばい。
蒼は、かおりがいじりたくなるタイプかも知れない。
「蒼ちゃんは日曜日なのにお仕事なの?しかも9時過ぎちゃってるじゃない」
「……もうすぐ帰ってくるよ。星音堂の職員なんだ」
むすっとして、圭一郎の前に座る。
近づきたくはないが、なにせ狭い部屋である。
大人が三人もいたら座るとこはない。
「星音堂の?そこで知り合ったんだね」
「いちいち、情報としてインプットしなくていいっ!」
世界のマエストロと呼ばれる男は天然だ。
代々の音楽一家でちやほやされていた圭一郎。
彼は彼なりに、挫折を味わっているらしいが、狭い音楽の世界だけでしか生きたことのない男は、一般的な常識とかけ離れているときがある。
関口からしたら天然記念物だ。
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