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17 嵐到来4
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「蒼になんて言うんだよ……」
「大丈夫よ。ホテルはとってあるから」
「泊めるなんて誰も言ってないし!」
父親も父親なら、母親も同類である。
こんなのんびりしていて世の中を渡っていけるのだから、やっぱり実力の世界なんだろう。
どんなにしっかりした人間でも、力がなければ上には行けない。
反対にこんな世間知らずな夫婦でも世界の最前線を走っていける。
それが関口には、もどかしい。
「演奏会、見に来てくれるんだろう?」
「……気が向いたらね」
「ま。圭ったら。本当に、お父さんが大好きなんだから♪」
これのどこが好きなのだ。
あからさまに嫌な顔をしていると言うのに、二人はにこにこしている。
圭一郎は、関口なんてまるで無視をして周囲を見渡す。
「蒼のだね。圭はあんまり読まない」
もう呼び捨てか!
余計ムカムカする。
「勝手に見るな!いじるな!蒼に怒られる……!」
「まあ。蒼ちゃんて、そんなに怖い方なの?」
もう振り回されっぱなしだ。
さっさと帰ってくれ~と思う。
帰ってからの続きは?
さっきのキスの続きとか、それどころじゃない!!
半分泣きそうになりながら、二人の暴走を止めようと四苦八苦していると、玄関の扉が開く音がした。
「ただいま……」
「げっ!」
とうとう、蒼が帰ってきてしまった。
彼は書類の整理で疲れ切っているのか、肩を押さえながら入ってきて動きを止めた。
「へ?さ、三人もいる……」
関口一人だと思っていた蒼にとったら、青天の霹靂だ。
瞬きをして三人を見渡す。
一人は同居人の関口。
そして、自分のエプロンをつけたくるくる頭の美人。
そして、もう一人。
先日、ポスターで見たばかりの男。
関口の父親?
ぽかんとして見つめていると、女性がささと側にやってきて嬉しそうに蒼の手を取った。
「お帰りなさい!」
彼女は、にこにこしていた。
「まあ。可愛らしい男の子じゃない。怖い方なんかじゃないわ」
「あの……」
「はじめまして。圭の母のかおりです。いつも圭がお世話になって……」
「え!関口のお母さん……!」
はは~とビックリして見詰める。
世界のプリマドンナだ。
くるくるの艶やかな髪に白い肌。
愛らしい笑みを浮かべたかおりが、関口の母親だなんて。
到底想像も着かない。
こんな大きい子供がいるようには見えないからだ。
「蒼。ごめんね。本見せてもらってたよ?」
圭一郎も笑顔で様子を見守っていた。
やっぱり。
関口の父親。
関口圭一郎だ。
「あ!お父さん……っ!」
「おや。おれも有名になったものだ。蒼に知っていてもらうなんて。光栄だねえ。美人さんだから」
「おい!」
関口は、むっとしている。
「ごめん。蒼」
「え!いいよ。おれの方こそ……。光栄です」
圭一郎とかおりは顔を見合わせて苦笑した。
「いつも圭が」
「お世話になってます」
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