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17 嵐到来6
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結局、お騒がせ両親は、深夜まで騒いで帰っていった。
二人は忙しい身であるが、珍しく長期休暇が取れたらしく、来週の日曜日の演奏会まで、こちらで羽を伸ばすと言っていた。
珍しいことだ……と関口は、何度も言っていた。
蒼には、よく分からないことだけど、世界を飛んで回っている二人のスケジュールが合うなんて、滅多にないことらしい。
もしかしたら、関口の新しい生活を覗き見するためにわざと調整したのかも知れない。
彼は、そう疑っていた。
しかし、蒼からしたら羨ましいことである。
彼にしたら、いろいろ問題のある家族関係なのかもしれないけど、こうして両親揃って息子のことを心配してきてくれるのだ。
愛情たっぷりではないかと思う。
夜はベッドに入ってからも、圭一郎の武勇伝を延々と聞かされ、いつの間にか眠りに入ってしまった蒼。
目覚めは悪い。
なにせ、関口の愚痴が子守唄だったのだから。
休み明けの星音堂は、活気がない。
うだうだと仕事を進めている事務室。
静まり返った事務室に、トイレに行っていた吉田が戻ってきた。
「星野さん。お客さんですよ」
「え?おれ?」
星野は、めんどくさそうに立ち上がり、事務室から出て行った。
普通だったら「誰だ?」とか「女か?」とか無駄口が出てくるはずなのだが。
今日は、みんな静かに仕事を進めている。
蒼もため息だ。
星野と入れ替わりに戻ってきた吉田は、蒼を見つめる。
「蒼?大丈夫?」
「は!はい。大丈夫です」
「休みぼけか~……」
言い返す気にもなれずに書類の作成を行おうと、パソコンに視線を戻す。
すると、さっき出て行ったばかりの星野が、顔を出した。
「蒼~。ちょっと……」
「?」
顔を上げ目を瞬かせてから、蒼は事務室から出た。
事務室から出ると、急に視界は暗くなる。
星音堂の中はうっすらやわらかい照明になっているから昼までも薄暗いのだ。
氏家たちから言わせると、高齢者の転倒の基だ!なんていっているけど。
蒼にしたら、心落ちつく照明だった。
「……?」
星野と共通の知り合いはいないはずだ。
もぞもぞして出て行くと、彼はにやにやして立っていた。
「なんです?」
「お前にお客様だ」
星野の後ろにいる長身の男が「こんにちは」と挨拶をした。
あれ。
「関口の……」
長身の男は関口圭一郎。
どうしたのだろうか……。
「こんにちは……」
自分になんの用だろうか?
瞬きをして何度も星野と圭一郎を見つめる。
「お前に話があるって」
「……え?」
意味が分からない。
彼が自分に用事があるとは到底思えないのだ。
困ってしまっていると、圭一郎は星野に笑いかける。
「すまんね。水野谷君には、君から言っておいてくれるかな?」
「分かりました」
にこにこした星野は「じゃあな」と蒼の肩を叩くと、さっさと事務室に入っていってしまった。
取り残された蒼はまごつくばかりだ。
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