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18 マエストロ4
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「なんだ。自分の分あげっちゃったのか?」
ベッドの上で楽譜を眺めていた関口は、身体を起こした。
「うん。母さんと行こうと思っていたんだけどね。しばらくぶりのデートだろうって思うと、それもいいかなって思って。それに、関口のお父さんにも会えるしね」
楽しそうに笑う蒼をみて関口は苦笑した。
「その日。蒼は休み取ったんだろ?だったら。おれに付き合ったら?」
関口は本棚の開いているスペースに置いてあったチケットを二枚取り出した。
「な、何で!二枚もあるの!?」
「母さんが蒼と来なって。今日置いていったんだ。だけど蒼は自分でチケット買ってたし。空さんと行くって言っていたから。なんか言い出せなくって……」
彼はにやにやして蒼のことをぎゅ~っと抱き締める。
「おれたちもデートしようよ!」
「う、うん!ありがとう!」
やっぱりこれでいいのだと思う。
関口とこうしていることができれば。
幸せが怖いなんて贅沢だ。
欲しくたってもらえないことだってあるのだ。
もらえるものはもらおう。
それが空の出した答えなのだから。
信じてみよう。
母親の言葉。
「おれ。良かったよ」
「え?」
「ううん。関口。ありがとう」
「……なに言ってんだよ。これはなあ。母さんが持ってきたものだから、おれが買ったわけじゃないんだぞ?」
訳が分かっていない関口は首を傾げる。
蒼は苦笑して関口を見詰めた。
「いいの。それでも!ありがとう」
関口の背中に手を回し、温もりを感じる。
幸せだ。
身体中からそう囁きが聞こえてきたような気がした。
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