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18 マエストロ6
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「ま、いっか。先のことを心配しても仕方ないもんね!心も温かくなったし!家が恋しい。早く家に帰ろう」
立ち上がり関口の腕を引く。
「家?」
蒼はうんと頷き関口を見降ろした。
「どうしてだろうね。家に帰りたくなっちゃった」
「ああ。分かった。やりたくなったんでしょう?」
「はっ!?」
ビックリして吹き出す。
関口は蒼の腕を逆に引っ張り、蒼を抱き締めた。
ホール内に人影はなくなってきたとは言えちょっとまずい。
蒼はわたわたと腕を振る。
「関口~!!」
慌てている蒼なんかお構いなしで彼はそっと耳元で囁く。
「いい音楽を聴いた後にやるといい感じだよ」
「なッ!」
「本当に」
「せ、関口!」
蒼は顔を真っ赤にして暴れる。
「蒼、おかしい」
「からかわないでよ!」
「からかってないって。本当のことなのに……」
じたばたして、やっとの思いで関口から解放される。
蒼は膨れて身体を起こした。
変な事になった。
回りの人に見られてやしないか視線を巡らせると、ふと止まる。
見知った顔を発見したのだ。
栄一郎と空である。
空は外泊許可が下りたのだ。
二人は微笑み手を振っていた。
「蒼」
蒼は慌てて関口を引っ張り、両親に紹介した。
「あの、」
蒼が声を上げたのを見て、栄一郎は笑う。
「圭一郎の息子だね」
「あ。始めまして。関口圭です」
「君は圭一郎の若い頃にそっくりだね」
関口はなんだか複雑な心境で笑う。
自分が父に似ているなんて。
「蒼をよろしくね。蒼は身体を壊すことが多いし、泣き虫なんだ」
「父さん……」
「はい」
栄一郎からこんな言葉が出るなんて。
思ってもみなかった。
蒼はなんだか余計幸せな気分になる。
こんなわがまましている自分のことを、栄一郎は心配してくれるのだ。
側にいた空も嬉しそうにしている。
彼女は外出用で私服を着ていた。
いつも病衣みたいなものを着込んでいることが多いから、こういう彼女は新鮮だった。
空はおしゃれしていて愛らしさが際立っていた。
お化粧をして綺麗にしていると若く見える。
「そうだ。父に逢ってやってくれませんか?」
関口は話題を変える。
「そうだね。久しぶりだし。逢っていこうか」
栄一郎は空を見た。
「私は大丈夫ですよ」
「疲れたら言うんだよ。早く帰るから」
「ええ」
お互いを気遣っている姿は、息子の蒼からしたら微笑ましいよな恥ずかしいような。
二人を連れてさっさと楽屋に向かった。
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