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「本当に可愛い顔して。みんな騙されているんだよ。お前に」
「啓介!やめて……って!」
ビックリした。
押さえつけられて近づく唇は蒼の耳に触れる。
くすぐったい感覚に身体が硬くなる。
「耳弱いんだったな。蒼は」
おかしそうに、笑っている自分の弟を見上げて泣きそうになる。
意地悪もここまで来るとは思わなかった。
手を伸ばして距離をとろうと、啓介を押し返すが、それは叶わない。
むしろ暴れたせいで身体は密着した。
「ちょ……っ!」
声を上げて抵抗しようとしたその時、啓介の動きが止む。
力が抜けて蒼は開放された。
視線を上げると、部屋の入り口には陽介が立っていた。
「あ~。陽介に見られちゃったなあ。蒼」
「陽介、あの……」
とっさにきまちゃんを引き寄せて小さくなる。
陽介は怒っているみたいだった。
「啓介っ!お前、蒼に手出したな」
真面目な顔で怒っている陽介とは対照的に、啓介はおどけた素振りで笑った。
「蒼はおれのものだって言いたいのかよ~?」
「うるさい!」
「ふ~ん」
二人は、にらみ合う。
このままでは、本当に喧嘩になりかねない。
蒼は、おろおろして二人を見上げた。
「ちょっと、二人とも!喧嘩はしないでよ」
「蒼は引っ込んでな」
「そうだ」
どうしようもない。
ただ、二人の顔を交互に見つめて泣きそうになっていると、栄一郎が顔を出した。
「蒼。お待たせ。空と久しぶりのドライブに行っていたら、遅くなってしまった」
「父さん!」
栄一郎は、こんな険悪な雰囲気にも気付かずに笑顔で声を掛ける。
「おや、みんな揃っていたね。ちょうどいい。さあ。話をするから居間に来てね」
彼は終始笑顔で三人を見つめる。
どうみても仲良しには見えない。
しかし、三人でいることが彼には嬉しいことらしい。
「いいねえ。兄弟が久しぶりに揃うのは」
上機嫌で一階に下りていく栄一郎。
啓介はしらけたのか。
肩を竦めて部屋を出て行った。
「蒼、大丈夫か?」
陽介は優しく蒼の手を取る。
「う、うん。なんでもない。陽介も勘違いしないで。あれはおれが転んで……」
「どう見てもそうは見えないけどな」
「……ぐ」
それはそうだ。
「蒼は相変わらず嘘が下手なんだから」
優しく笑う陽介。
あの頃と変わりない。
自分のたった一人の味方。
頭を撫でられるとほっとした。
「さ、行こう」
「うん」
蒼は陽介に促されてきまちゃんと抱いたまま、階段を下りた。
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