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20 突きつけられたもの2
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熊谷家で一体、なにが起こったのか。
関口には想像することも出来なかった。
蒼の身になにが起こったのか?
涙が止まり、落ち着いてからも彼は、なにも話しをしなかった。
いつもだったら、どんなに細かいことでも話をしてくれるのに。
彼は、ぼんやりとベッドに寄りかかって、なにか考えているようだった。
「蒼」
声をかけるつもりはなかった。
思わず呟いてしまった蒼の名前。
彼はゆっくりと顔を上げた。
ぼんやりしていて瞳に光はなかった。
関口は、ベッドの上から彼の顔を覗き込む。
「気分は悪くない?」
「……うん」
きまちゃんを抱く手に力が入る。
様子が変だった蒼がつれてきた、ぼろぼろのぬいぐるみ。
なんだろう?
思い出の品なのかな?
関口は瞬きをして、きまちゃんを見つめる。
「……蒼」
もどかしくて仕方がない。
気持ちは焦った。
蒼はこんなに悩んでいるのに……。
自分は、なにも出来ないなんて。
一体、実家で何があったのだろうか……。
蒼の家の事情を知らない関口には、想像もできない。
母親のことで、父親となにかあったのだろうか……。
いや。
昨日の様子から考えると、両親となにかがあったとは考えにくい。
そうすると、あの不穏な感じを受けた兄弟となにかあったに違いない。
しかし、それは関口の憶測にしか過ぎない。
蒼が何も言う気が無いのでは、自分はどうしようもないのだ。
「蒼。調子が悪いんだったら、今日はもう寝たほうがいいんじゃないか?明日だって無理することない。とりあえずゆっくり休んで……」
蒼のことを気遣って色々話しをするが、ぼんやりしている蒼には届いているのか?
「蒼」
肩を掴んで揺すってみる。
焦点の合っていなかった蒼の瞳が、徐々に光を増す。
「え?ごめん。なあに?関口?」
首を傾げる蒼。
これは重症だと思う。
まったく聞こえていない。
「蒼」
大きくため息を吐いた。
「おれはあまり立ち入れないけど……。何かあったのなら、おれに言ってくれたっていいんだぞ」
「関口……。ありがとう。……でも、ごめん」
「蒼……?」
「おれの問題なんだ。どうしたらいいのか……」
関口は目を細めて頷く。
「ゆっくりでいいんだよ。蒼。心に思い浮かぶことを一つずつ言ってごらん」
「……関口」
関口に促されて、蒼はしばらく考え込んでいた。
しかし、こうして静かにしていても頭の中は混乱しているのだろう。
ぽつりと言葉を紡ぐ。
「今まで信じていたことが……全部ひっくり返ってしまって。どうしたらいいのか。胸がどきどきして、息が苦しいんだ」
「蒼……」
信じていたこと?
関口はただ黙って聞き入る。
「母さんが、あんなことになっちゃって。なんでかなって。自分が悪い子だからかなって思ってた。でもね、そのときに陽介が……」
「陽介?」
「おれの血の繋がらない兄」
やっぱり。
これが星野の言っていた兄弟か。
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