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20 突きつけられたもの5
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長期旅行の井出達。
がさがさとしていたら結局、蒼も目を覚ました。
きまちゃんを抱いたまま、玄関まで見送りに出てくれる。
「心配だ。置いていくのは」
蒼白な蒼の頬に手を当てる。
彼はうっすら笑顔を見せた。
「なに言ってんだよ……。おれ子どもじゃないよ?」
彼の笑顔は寂しげだ。
大きなかばんとヴァイオリンを抱えて、関口は戸惑う。
こんなに行きたくないのは、初めてのことだった。
「だって……」
「ちゃんとやってきなよ。関口!お土産も忘れないでね」
必死に明るく取り繕うとしているのが手に取るように分かる。
心配を掛けまいとしているのだろう。
それが痛々しくて……。
ざわざわ胸が騒いだ。
「寂しいのはおれか……」
ふと、おかしくなる。
こうして。
彼を一人にするのが不安なのは自分のほうだ。
首の後ろに手を当て、そっと引き寄せる。
それから唇を重ねた。
軽く。
何度か。
「寂しい。一週間も……」
「おれもだよ」
蒼は瞳を細めて囁く。
「いってらっしゃい。遅刻しちゃう」
いつまでも出かけられない関口の背中を押す。
「蒼」
「早く行って、早く帰ってきて!待ってるから」
半分、追い出されるみたいな格好で放り出された。
ひどい。
関口は、しょんぼりして階段を下りていった。
彼の足音が遠ざかるのを、玄関の扉に額をつけて聞いていた。
行ってしまった。
関口。
心細い。
一人で一週間もいられるだろうか。
静まり返った室内。
薄暗いそこはなんだか寂しく感じられる。
「もう一回、寝よう……」
なにもする気も起きない。
寝て過ごすしかない。
そう思ってベッドに戻ろうとしたとき。
玄関のチャイムが鳴った。
「……?」
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