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20 突きつけられたもの6
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誰だろう。
無視しようか……。
しかし、チャイムの後に激しく玄関を叩く音。
「蒼っ!」
しかも自分の名前を呼んでいる。
「……!?」
「こらぁ!いるのは分かってんだぞ!居留守なんて使ってんなよッ!」
別に居留守のふりをしているわけではない。
ただ、戸惑ったから。
鍵を開けなかっただけなのに。
ひどい言い草だ。
こういう物言いをする女性といえば……。
一人しかいない。
玄関を開ける。
そこには予想通り。
キャミソール姿の桃が立っていた。
「桃さん……?」
彼女は、仁王立ちになっていた。
「さっさと開けろって言ってんのっ!」
「ごめん。でもどうしたの?」
蒼は怖くなって後ずさった。
「関口は、今日からいなっくって……」
「知ってる!今日は、関口じゃなくってあんたに用事があって来たのよ」
桃はじろじろ蒼を見る。
「……」
「あんた。みすぼらしいわね。辛気臭い顔してっ」
「酷い……」
それは、本当のところなんだろうとは思ってみても、面と向かって言わなくてもいいじゃないかと思う。
顔に手をあてがい、なんだかひどく落ち込んでいる表情にがっかりした。
「ま、あんたの顔なんて、どうでもいいんだけど!」
それもひどい話だ。
蒼は余計しょんぼりする。
「ともかく、今日から一週間、あんたは私の所に来なさい」
「な!」
突然のナンパ?
いやいや。
突然の命令。
蒼は、ビックリして目を大きくする。
意味が分からない。
「関口に頼まれたの。さっさと荷物用意しなさい」
「え……?」
関口が?
どういうことだ?
ぼんやりしてしまっている蒼を見て、桃は苦笑する。
「あんたのことが心配で仕方が無いのよ。そんなことは一つも言わないけどね。私は分かる。あいつとの付き合いも長いし。ほれ!分かったら、さっさと用意しな」
そっか。
関口が。
蒼が一人だと心配だと思って、桃に頼んだのだろう。
一人のほうが、色々考えられるからいいんだけどな。
そう思うけど、彼の好意だ。
しかも、それを引き受けてくれた桃にも感謝だ。
いくら蒼が関口と付き合っているからって、女性の家に転がり込むのだ。
桃だって警戒してもいいくらいの話なのに。
それでも蒼を引き取ってくれるという。
ありがたい話だと思った。
「……ごめん。桃さん」
「いいって」
蒼は桃にせかされて、荷物をまとめた。
ここは素直に受け取ろう。
一週間も世話にならなくても平気かも知れなし。
とりあえず……だ。
蒼はそう言い聞かせて荷物を持った。
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