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20 突きつけられたもの9
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「あんたは、ここでいい?」
桃は和室にふとんを出す。
それをぼんやりみていた蒼は、我に帰って顔を上げた。
どうせ聞いていないんでしょうけどっ!と一人で膨れてから彼女は蒼に詰め寄る。
「いい?私は夜型で朝は苦手なの。まあ、関口に頼まれて、毎日送り迎えしろって言うから、起きるけど。それは分かっててちょうだい」
「え!?」
蒼は恐縮する。
「毎日の送り迎えなんて……」
「仕方ないでしょう?あいつにどうしてもって頼まれたんだから……」
「関口が……」
そんなに心配してくれていたのか。
ただ、うつむくしかない。
なんだか、彼に心配ばかりかけて情けなく感じた。
「いいわね?あんた一人の外出も避けてちょうだいよ!」
「え!どういうこと?」
「ともかく!あんたを一人で外に出すなって言われてるの」
困惑した。
「まったく過保護よねえ。あいつも」
困ってしまった蒼を見詰めて、桃は苦笑する。
「本当に好きなのよ。あんたのこと」
「……桃さん」
「あいつの気持ちもわかってあげな。百歩譲って今回だけは、あいつの望みを聞いてあげなって」
荷物を置き、彼女は部屋を出て行こうとして足を止めた。
「今日ピアノのレッスンがあって出かけるんだけど。あんたはどうする?」
蒼はおたおたと周囲を見渡してから、桃に視線を戻す。
「あ。おれは……。今日は寝てようかなって思っていて……。お世話になるし、掃除とかしておく?」
「いいって」
桃はがははと笑って手を横に振る。
「そういう気を使われるとあたしも困るから。でも、あんた。料理上手なんだってね。じゃ、食事をお願いするかな?」
それなら蒼にも出来る。
掃除は苦手だから。
本当は避けたい。
「助かる。なんかさせてもらわないと、さすがに悪いし」
ほっとしたら笑顔が出た。
「……」
「なに?桃さん」
蒼の顔をじーっと見詰めている桃。
「いや……。なんか、いつもの蒼と違うなって思ってたんだけど。やっと笑ったね」
「……」
「いいって。関口が心配するくらいだから。なんかあったんでしょうけど。ここではお互いのことは、あんまり干渉しないようにしましょう?あたしも嫌だし。お互い様ってことで。ね?」
「う、うん」
大きく頷いて、ほっとした。
さばさばした性格の彼女でよかった。
ここで根掘り葉掘り聞かれたり、同情されたりしたら余計に負担だ。
関口は、そういうところも考えてくれていたのかも知れないけど。
ただ、桃しか頼める人がいなかったのかも知れない。
「よし。じゃあ。いってくる」
彼女は笑顔を見せて外出していった。
それを見送ってから、早々にふとんにもぐりこむ。
しんと静まり返った、なれない場所。
瞳を閉じてもすぐには眠れそうにない。
関口のことについて思いを馳せる。
彼は自分のことをとても大切にしてくれる。
自分は。
陽介のことは衝撃ではある。
だけど、だからと言っていつまでもめそめそしていてはいけないと思った。
いつまでも……。
なんとかしなくちゃいけないのだと思う。
自分のことを心配してくれる関口のためにも。
「おれだって……」
蒼は、きまちゃんを抱きしめて布団の中で丸まった。
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