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21 兄弟2
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この辺でゆっくりできる場所と言ったら、そらまめしかない。
二人は連れ立ってそらまめの扉を開けた。
圭一郎とのこともあったからどきどきだったけど、ウェイトレスも時間帯で替わるのだろう。
あの時、その場所に居合わせた人はいないようだった。
ほっとした。
二人は空いている店内で、窓側に通された。
向かい合って座り、コーヒーを注文すると、さっそく啓介は口を開いた。
「話って陽介のことなんだが……」
やっぱりの話題。
蒼はかしこまって椅子に座っていた。
逃げてばかりはいられない。
蒼はまっすぐに啓介を見つめる。
「うん」
「この前のことは、本当にビックリしただろう?」
彼は居心地が悪そうに蒼を見つめる。
「うん。正直ビックリもしたし。ショックも受けた。まさか、陽介があんな風に思っていたなんて思わなくて」
いまだに動揺は隠しきれていない。
両手を握り締めて視線を伏せる。
「ずいぶん、ショックだったみたいだな」
「だ、だって……。おれは、なにも知らなかったんだ。なにも知らずに生きてきて。バカみたい」
「蒼にとっては初耳だったかもしれない。でも。おれはずっと知ってたし。見ていたんだ」
「……え?」
「陽介は、蒼のこと好きだった。昔から。兄弟で兄としてとかじゃなく」
「……」
蒼には返す言葉も無い。
絶句状態とでも言うのだろうか。
言葉が出てこない。
喉の奥が苦しくなった。
「あいつはお前のことを一番に考えて、守ろうとしていた。初めて逢った日から、お前のことばかりだったよ」
「でも、おれは全然知らなくて……っ」
うろたえている蒼を落ち着かせるように啓介は声をトーンを下げた。
「陽介にとったら、お前が世界の全てだったんだろうな」
「……」
「おれだって覚えてるよ。お前と初めて逢った日の事」
彼は微笑を浮かべる。
「頼りなさそうな年上の子。こいつが兄ちゃんになるなんて信じられなかったし。おれの方がずっと頼りになるって蒼のことバカにしたな~」
「やっぱり……そうだろうと思った」
案の定だ。
蒼は思わず笑ってしまう。
「だって、頼りないじゃん。母さんの後ろから離れない泣き虫の甘えん坊は」
「確かに。泣き虫だし、甘えん坊だったしな~……」
あの頃のことを思い出すと気恥ずかしくて笑ってしまう。
意地悪ばっかの啓介だけど、本当は優しい子だってことは蒼もよく分かっている。
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