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21 兄弟4
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桃は蒼のお手製パスタを巻き巻きしながら彼を見詰める。
「今日は遅かったね」
目の前のキッチンで料理をしている蒼の手が一瞬止まる。
しかし、すぐに動き出した。
「え?うん……」
振り向きもせずに返答する蒼。
桃はパスタを頬張った。
「本当、あんたって単純で分かりやすくて……暗い子ねえ」
「なっ!」
突然、ひどいことを言う。
蒼は慌てて振り返った。
その顔は青ざめていて、なにか思いつめた表情だった。
桃の予想通りだ。
「悩んでんのね?」
「……っ!えっと……」
慌てて目元を拭う。
陽介とのことをどうしたらいいのか考えていたら暗い顔をしていたらしい。
桃は愉快そうに彼を見上げる。
「関口も過保護だからな~。本当に陰気な子ねえ。世界の終わりみたいな顔してるよ?」
「……陰気って……」
図星かも知れないけど、堂々と言わなくてもいい単語だ。
蒼はしょんぼりする。
「あんたが生きてる限り、世界は続いていくんだから。成せば成るじゃん。いつまでもうじうじしてんじゃないよ」
桃は豪快に食を終え立ち上がる。
「ごちそうさま!」
「桃さん……」
「あたし、明日は遠出するから。あんたは好きにしな」
「桃さん……」
「ちゃんと自分で決着しないとダメだよ?」
桃はさっさと自室に引っ込んでいった。
ぼんやりする蒼。
じ~としばらくそのままでいると、焦げた匂いに気づいた。
「あ!」
慌てて視線を落とすと手元のフライパンは焦げていた。
「おれの夕飯が……」
がっくりうなだれて、蒼はため息を吐いた。
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