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「よーし!終わったー!」
妙に明るい蒼に、事務室は困惑の雰囲気を漂わせていた。
ここのところ彼が暗いせいで事務室は曇り空が続いていた。
しかし、今日は様子が変だ。
いつもの蒼に戻っている。
悩みが解決したのだろうか?
星野は不審を抱き、蒼を見つめる。
「お前。平気か?」
「どうしてそんなこと聞くんですか?おれは元気です」
蒼はにっこり微笑む。
星野はがっかりした。
蒼一人のおかげでどれだけ事務室が振り回されたことか。
気まずいムードが漂い、本当に息苦しかったんだから……。
しかし、彼は自分がそんなに周囲に影響を及ぼすなんて思ってもみないだろう。
けろっとしていた。
「今度は何が始まった……?」
水野谷までも首を傾げた。
不在がちとは言え、彼も同じことを感じていたのだろう。
蒼のはしゃぎように呆れて口を出す。
「課長!おれは仕事が終わりましたので帰らせていただきます!」
「は?どうぞ。終わったならさっさと帰ってくれ」
蒼の迫力に押されて水野谷はあとずさる。
それがおかしくて事務室はどっと湧いた。
「じゃ!お言葉に甘えて!失礼します!」
IDカードを機械にあてがい、退勤の手続きを行う。
それから荷物を抱えてわたわたと出て行った。
彼を見送って一同は苦笑する。
「今度はどうしたんです?」
吉田は小声で星野に囁く。
「知らん……」
「そういえば、関口のやつも最近、見かけませんね」
「あいつは明星で海外渡り歩いているってさ」
星野は思い切り背伸びをする。
「明日はあいつが帰ってくるんだ~。まったく!一週間気使ったぜ~」
「?」
「お守りは性に合わん……!」
星野は肩に手を当てて大きくため息を吐いた。
吉田には意味が分からない。
彼は首を傾げて仕事に戻った。
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