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21 兄弟7
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「関口は、おれのことを闇から引っ張り上げてくれたんだ」
「は?関口?お前の恋人?」
静かに頷き、話を続ける。
「生意気な奴でね。育ちがいいせいでお金には無頓着で。生活力もからっきしなくて。社会性もないやつなんだけど、関口には、やらなくてはいけないことがたくさんあって、夢ばっかり追いかけてるんだ」
蒼は苦笑する。
関口のことを自分は、こんな風に思っていたのだと改めて実感したら、なんだか恥ずかしくなってしまった。
「蒼……」
「関口の道におれが寄り添っていけるのかどうか、よく分からないんだけど。だけど、おれの道に彼は必要なんだ」
彼?
陽介は瞬きをして納得する。
そうか。
男だったのか。
彼女じゃなかったのだ。
蒼は嬉しそうに関口の話をしていた。
好きなもの。
興味のあるものを話すときの表情。
瞳はきらきらして、恋する乙女みたいだ。
彼にとって、その男は本当に大切なものなのだろう。
昔からそうだった。
本の話をする時もそうだった。
だけど、今はなんだか違う。
彼の瞳には意思が感じられたのだ。
相手がどう思っていようと自分はついていく。
そう決めてしまった瞳だった。
はっと息を呑み、しばらく黙っていたが、諦めた。
陽介は大きくため息を吐いた。
「蒼……。お前、変わったな」
蒼は瞬きをして笑う。
「啓介にも言われたんだけど……。おれはなにも変わってないんだけどな~」
「いや。変ったよ」
軽くため息を吐く。
蒼の決心は固いようだ。
自分がどうこうしても始まらないのかも知れない。
陽介は蒼をまっすぐに見つめる。
「お前の気持ちが変えられないように、おれの気持ちもすぐには変えられない。だけど、お前がその関口ってやつをいかに大切に思っているかは分かった。今回は大人しく引き下がろう」
「陽介……」
蒼は、ほっとする。
分かってもらえたようだ。
話せば分かる。
そう思っていた。
だって兄弟だし。
蒼の大切な人だもの。
この陽介も。
ほっとしたら、なんだか気持ちが緩んだ。
へらっと笑う。
その笑顔を見ていると、本当は手放したくない思いが募った。
だけど、もう無理に繋ぎとめることは出来ないってわかったから。
関口とはどのような男なのだろうか?
もし蒼につりあわないような男だったら許せない。
「ただし!」
陽介は蒼を掴んで引き寄せた。
二人の距離は一気に近づいた。
「え?」
「その、関口に一度逢わせろ。それから決める。お前を任せられるのかどうかをッ!」
「ええ!?逢うの?関口に?」
「当たり前だろうが。男だろうが女だろうが、蒼の恋人なら熊谷家とも交流してもらわねば。そう考えると、きちんと挨拶にくるのが筋じゃないか」
なにも結婚を前提にお付き合いしてますとか、そういうのではないのだが……。
蒼は意地悪く笑っている陽介を見る。
なんだか彼が鬼の小舅に見えてきた。
「あ、あの……。陽介……?」
「認める認めないは、それからだな」
「……」
腰に手を当て、仁王立ちスタイルで高らかに笑っている陽介。
蒼は恐ろしくなってしまう。
大丈夫だろうか?
関口を連れてきたら、なんだか修羅場になりそうな気がして恐い。
おろおろしてしまった。
一難去ってまた一難。
大変なことはまだまだ続く。
「どうしよう。ごめん、関口……」
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