アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
22 不穏な出会い1
-
日本を代表する交響楽団といえば、先日、圭一郎が星音堂に引き連れてやってきたNNK交響楽団。
関口が所属している明星交響楽団も演奏会やテレビ出演などで名前を売っているものの、やはりNNKには及ばないのが現実だ。
明星も世界に通用する交響楽団にしたい。
追いつけ追い越せの問題ではないが、明星もNNKと肩を並べられるくらいのレベルにしたいと言うのが明星オケ関係者の思いだ。
そこで、明星は積極的に海外での演奏も企画していた。
ただ海外での演奏をこなすだけでなく、世界のマエストロたちと競演することで、話題性を作りつつ、団員のレベルアップも図れる一石二鳥の作戦だった。
転々とヨーロッパを回り、最終公演となるヨーロッパツアーの締めくくりはドイツ。
今回は世界的に有名な指揮者、ガブリエルが指揮を取ってくれることになっていた。
日本は残暑厳しい季節だが、ここは過ごしやすい。
一日中、練習室で缶詰になっている関口たちには関係の無いことでもあったが……。
最終公演になるその演奏会に向けての思い入れは強いらしい。
確かに。
オーストリアやイタリア、フランスなどでの演奏時でも有名どころを起用してきたことに違いはない。
しかし、今回の指揮者はレベルが違いすぎる。
世界のマエストロなのだ。
多忙で数年先までの予定が入っているといわれている男。
明星が捕まえられたのは奇跡に近いことだったのだ。
失礼があってはいけない。
最終公演は朝からホールで練習に明け暮れるような日程になっていた。
『今回の海外ツアーの締めくくりとして、コンダクターにはマエストロ・ガブリエルをお迎えすることが出来ました』
マネージャーの田島の言葉に、一同は席に座ってぼんやりとしていた。
もう疲れきってしまった。
本番は明日。
それなのに、今日は朝から練習し通しだった。
せっかくドイツに来たんだから、もう少し観光なんかしたいところだけど、仕事で来ているのだからそうはいかないだろう。
関口は気が気ではない。
蒼があんな状態になる前に打ち合わせをしていたお土産リスト。
ちっともノルマを達成していないのだ。
最初の頃に買って配送してしまえばよかったのに。
ずるずるといつまでも買わずにいたら、最後のドイツでほとんど時間が取れないことが発覚し焦っていたのだ。
そわそわしている関口を横目で見ながら、宮内は苦笑する。
「ちゃんと聞いとけよ」
肘でちょっちょっと突いてくる。
はっとして顔を上げると、マネージャーの後からドイツ人が出てきた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
149 / 869