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20 不穏な出会い6
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関口はビールを飲んでしまって、よく昨晩のことは覚えていない。
最初、食事をしながら蒼のことやコンクールのことを話していた。
しかし、気が付くとホテルの自室で眠り込んでいた。
どうやって帰ってきたんだっけ?
悪酔いなんて珍しい。
蒼のことを心配していたせいもあって、精神的に不安定だったのだろう。
それに、海外ツアーで疲労もあるようだ。
自分が思っているよりもダメージは大きいのかも知れない。
目を覚ますと緋色のくすんだ天井が見えた。
頭が調子悪い。
ぼんやりしていて思考が働かないのだ。
頭を押さえようとして手になにかを握っていることに気が付いた。
身体を起こしてみると、そこにはチョコレート。
しかも同じものばかり10箱以上はある。
「……へ?」
どうやら、昨日はお土産のことも気にしていたせいで、夕食の後に買い込んだらしい。
しかし、酔いのせいで手当たり次第に買ってしまったようだ。
蒼との打ち合わせなんて全く無視した買い物になってしまった。
しかも、こんなに大量にやるところはない。
「なんだこれ。ハワイのお土産じゃね~んだぞって」
がっくりした。
起き上がったついでに側にあったペットボトルに手を伸ばす。
日本のように水道の水が飲めないのは不便だと思った。
時計を見るとまだ余裕がある。
今日のリハは午後からだ。
確か、リハはガブリエルの愛弟子が取り仕切るって話だっけ。
巨匠の愛弟子か。
なんだか関口には程遠い単語である。
しかも、彼は駆け出しで、関口と同じくらいの年齢だと聞いている。
自分と大して変わらない男。
彼はもう世界に飛び出しかかっているのに。
自分はいつまで日本にくすぶっているのだろうか……。
ぼんやりした頭ではなにも考えられない。
首を横に振ってから頭をすっきりさせようとシャワーを浴びに行く。
熱いシャワーを浴びて、思考がはっきりしてくる。
すると嫌なことばかりが脳裏をかすめ、余計に混乱した。
不甲斐ない。
蒼のことを心配している場合ではないだろう。
関口自身もしっかりしていないのだから。
「信用なら無いのはおれの方かもな」
タオルで頭を拭きながら部屋に戻る。
自分は蒼を守るなんていっているけど、本当に大丈夫なのだろうか?
男として、人間として、自分は蒼に劣っているように思われる。
夢を追いかけていると言ったら格好がいいかもしれないけど。
現実は、なにも成せない半人前といったところだ。
大きくため息を吐き蒼の写真を見ようとして、はっとした。
「あれ!?」
ない。
「あれれ!?」
蒼の写真は見事に無い。
昨日宮内に見せたっきり覚えていない。
酔ったときにどこかで出したかな?
なくしてしまったらしい。
荷物をひっくり返してみても蒼は出てこなかった。
「は~」
せっかく蒼の写真を手に入れたっていうのに。
がっかりだ。
「ごめん……。蒼」
なんだか、いっぺんにやる気がなくなってしまった。
「早く帰りたいよ」
関口は再びベッドに横になった。
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