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23 すれ違い1
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関口はアパートの階段をどきどきしながら上がって行った。
手には、出て行ったときの荷物とお土産の袋を抱えている。
駅から自分の車に乗り込もうとしたとき、蒼からメールが入った。
もう桃のところからは帰ってきているとのことだった。
自分がいない間、蒼は大丈夫だったのだろうか。
どんな顔をして中に入ればいいのだろうか。
関口は悩んでいた。
玄関の前に来ても迷ってしまう。
入りかねて、おろおろと玄関前を行ったり来たり。
「どうするかな……」
一人で悩みこんでいると、急に玄関が開いた。
ぼんやりその場に立っていた彼は開け放たれたドアに思い切りぶつかった。
ゴンッ!
「痛っ!」
「あ!ごめん!関口」
顔を出した蒼は、すまなそうな顔をしていた。
「車が帰ってきたのに全然上がってこないから。心配になって見に行こうと思ってたんだよ?」
関口は、ぽかんと蒼の顔を見詰める。
彼は大きな瞳を瞬かせて首を傾げていた。
「関口?」
「あ、蒼……」
「どうしたの?入りなよ」
ぼんやりしている関口の腕を掴んで、室内に招き入れる。
それでもまじまじと蒼の顔を見つめる関口。
「関口?」
「は!う、ううん。なんでもないんだ。なんでも……」
なんだかよく分からないが、問題は解決したようである。
蒼はいつもと変わりがなかった。
にこにこしていて、優しく迎えいれてくれた。
なんだかほっとした。
時差の関係もあったのかもしれない。
考えがまとまるまで時間がかかった。
やっと心から蒼との再会を喜べる。
嬉しくなって蒼をぎゅーっと抱きしめてみた。
「なんだよ。急に……」
「あ~、蒼だ!本物だ~」
「関口……」
口に出して言えないけど。
蒼も同じ気持ちだった。
本当に、ここにいるのが関口なんだと思う。
一週間ってこんなに長いものだったろうか……?
そっと彼の背中に手を回して、身体をくっつけると、関口のかおりがした。
心地いい。
「おかえり……」
「ただいま」
しばらく余韻に浸り、荷物の整理をしようと身体を離す。
しかし、関口はまったく離れようとする気配はない。
関口にしたら、ともかく蒼に触れていたいのだ。
べたべたくっつくものだから逆に嫌がられてしまう。
「ちょっと!関口。おみやげは?」
「……え」
やばい。
関口の脳裏には大量のチョコレートたちが浮かんでくる。
「別にいいじゃん。蒼……」
「だめっ!」
さっさと彼の腕を解いて、蒼は関口の持ってきた荷物を取り上げる。
袋の包装を外しながら、蒼は静かに話す。
「……関口には本当に感謝してる。心配してくれたんだね。桃さんにまで頼んでくれて」
「蒼」
「本当にごめんね。心配掛けて。……でもなんとかなったから。おれはもう大丈夫だからね」
「よかった。元気で」
「……うん」
蒼は笑った。
この笑顔が見たかったのだ。
蒼らしい。
確かに、蒼はなんだか影のある男ではあるが、やっぱりこの笑顔がいいと思う。
ベッドの上に腰を下ろしてほっとした。
蒼には笑顔が一番だ。
しかし、その笑顔もすぐにかげる。
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