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23 すれ違い2
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「げ!関口!なにこれ?」
「ああ……それは……」
袋から出てきたのは大量のチョコレート。
呆れてしまう。
「ちゃんとメモにしていったのに。なんで、こうなるのかな~」
「だって……」
こういうときは、蒼の方がしっかりしている。
あらかじめ海外ツアーが決まった時点で、蒼と関口はお買い物リストを作成していたのだ。
桃は酒が好きだからワインとか、星野にはタバコとか。
あらかじめ決めていたのに。
結局、海を渡ってやってきたのはチョコレートだけであった。
「どうすんの!?関口……?」
信用なら無いといった顔で見つめられても困ってしまう。
だって、もう買ってきてしまったのだから。
「ぐ……。酔ったらそれしか買えなくって……ごめんっ!蒼!!」
両手を合わせて頭を下げる。
「関口は……仕方ないなあ」
お土産のことは気がかりだったけど、それよりも蒼のことが心配だったからと言いたいところだが、それでは言い訳である。
あちらでは、ちゃっかり宮内と飲み歩いてしまったのだから。
弁解の余地もない。
ここは謝るしかないのだ。
「ごめん」
珍しく関口が素直に謝る。
蒼は面食らってしまった。
なんだか怒っているのに気が抜けてしまった。
「うそだよ。ごめんって。関口も頑張ったんだよね。忙しかったんでしょう?」
蒼は苦笑して関口の頭を撫でる。
「ごめん……。蒼」
「いいって。でもどうしようね。柴田先生ってお酒じゃなくても失礼にならない?それだけが心配なんだけど……」
「……先生はあんまり甘いものは食べないんだけど。奥さんは好きなんだよなあ」
「じゃあ、大丈夫かな?そうだ!いい考えがあるよ」
「なに?」
「まあ任せなって。明日は休みだし。みんなに配ろうね」
「蒼~」
こういう場面ではやっぱり彼の方が年上だ。
頼りになる。
「あ。そうだ。蒼にこの写真返す」
関口は和服姿の蒼の写真を取り出す。
「いいの?もう」
「いや?」
曖昧な返答。
写真を受け取りつつ、首を傾げる。
「どういうこと?」
「いや。いいとは言えないんだけど」
じーっと写真を名残惜しそうに見詰める関口。
「え?」
「蒼に逢えない時間もあるし。やっぱり持っていたいんだけど」
蒼は苦笑する。
「いいよ。あげる。それ」
「本当?」
「そんなんでいいならね。写真って嫌いであんまり撮ってないから、いいやつじゃないけど。そんなんで関口が元気を出してくれるなら」
「蒼っ!」
関口は嬉しくて蒼に飛びつく。
反動で二人は床に転げた。
「わわっ!」
「おれ、やっと蒼のところに帰ってこれた……。蒼。逢いたかった……」
「関口~……」
さっきも挨拶はちゃんとしただろうと思ってしまうが、彼の喜んでいる姿は蒼にも嬉しいことなのだ。
しばらく関口の温もりに浸るが、気を取り直す。
「ほら!チョコの割り振りしないとでしょ」
「あ。うん」
苦笑して子供のようにはしゃいでいる関口を見詰める。
関口と言う男はまだまだ子どもだ。
夢を追いかけて、自由奔放に生きている。
音楽以外ではあまり苦労もしてこなかったのだろう。
彼のひねくれは、照れ隠しだってことに気が付いた。
本当は素直で甘えん坊だってこと。
指示をされて、せっせと割り振りを手伝っている関口を見つめて、蒼は微笑を浮かべた。
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