アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
23 すれ違い9
-
中学校時代の彼女である安岐に再会した関口。
市民オケの練習後に星音堂の近くにあるファミレスにやってきていた。
田舎で21時過ぎに営業をしている飲食店と言ったらファミレスと飲み屋くらいなものである。
ゆっくり話しをしたいと言うこともあって、今日、選んだ場所はファミレスだった。
安岐はラザニアを注文し、嬉しそうに瞳を輝かせている。
かなり期待されてしまっていることは手に取るように分かった。
関口だってバカではない。
「本当に嬉しい!関口くんにまた逢えるなんて」
安岐はさっきから何度もこの言葉を言っている。
「……」
関口は気が気ではなかった。
目の前の彼女よりも蒼のことが心配だ。
さっき、メールを入れたが、分かってくれただろうか……。
携帯ばかり気になるが蒼からの返事はない。
分かってもらえないのか?
なんだか心配だ。
なんでもいいからリアクションをしてくれればいいのに。
もしかしたら、自分が友人との食事をすることで遠慮して返事をよこさないのかも知れない。
蒼はそういう変なところで気を使う男だから。
なんだか心配だった。
この前のこともあったし、彼を一人にしておきたくないのだ。
側にいられるときは極力側にありたい。
「ねえ?聞いてる?」
はっとして顔を上げると、彼女は心配そうに関口を見ていた。
蒼のことで頭がいっぱいでよく聞いていなかった。
「あ。ごめん」
関口はいつの間にか注文していた食事が目の前に並んでいることにビックリした。
いつの間に。
よっぽど蒼のことが気に掛かるようだ。
「なんか疲れているんじゃない?それとも迷惑だった……?」
「え!いや。そんなことはないけど……」
「よかった!関口くんは変わってないけど、なんだか雰囲気が違うから話しかけるのに躊躇しちゃったんだよ?」
「そうか?おれはなんにも変わってないけど」
「そっかな~?」
微笑む彼女。
ふと中学時代の記憶が蘇った。
「そういうお前は変わったよ」
「そう?」
「うん。大人になったな」
関口の言葉に安岐は笑う。
「なにそれ!お父さんみたい」
「そうかな?」
「そうだって」
窓に映る自分は何だか情け無い顔をしているように感じる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
165 / 869