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23 すれ違い10
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「関口くんは、先生で生計立ててるんだ!プロだね」
「そういうのはセミプロって言うんだぞ」
「そうなの?」
「そうなの。そういうお前は何しているんだ?」
「あたし?あたしはただの事務員だよ~。パソコンに向かう日々」
「なんだかイメージと合わないな」
「なにそれ」
会話を進めていくうちに昔の調子を取り戻す。
懐かしい。
さっきまでの心配は薄れた。
大丈夫だ。
蒼だって大人なんだから。
そう自分に言い聞かせる。
安岐は話が上手い。
テンポよく進む会話にいつの間にか引き込まれてしまった。
気が付くと、時間は0時を回ってしまっていた。
「げっ」
「どうしたの?」
「もうこんな時間だ」
あいかわらず蒼からの返事ない。
「明日早いの?」
「いや……」
「だったらいいじゃん。せっかく懐かしい話で盛り上がったのに」
「しかし」
一応、関口なりに考えている規則がある。
いくら自分が休みでも蒼は働いているのだから、午前様にはならないこと。
それから、必ず夜は蒼と一緒に寝ること。
関口のように時間に縛りのない男にとって、生活の乱れが起こることは一番恐い。
だから、こうして自分に門限を課しているのだ。
「おれ。帰る」
「関口くん」
「ごめん」
「……。なんだか変!はっきり言ってよ」
安岐は鋭い。
どっちにしろ伝えようと思っていたことだ。
関口は大きく息を吐いて彼女を見詰めた。
「安岐。おれ、いま付き合ってる人と一緒に住んでいるんだ」
「え!?そうなの?」
彼女は瞬きをして関口を見上げる。
「うん。今日は言ってこなかったから。帰る」
彼女から今までのような笑顔は消えていた。
「そう、なんだ。……。そうだよね?恋人がいないほうがおかしいもんね。ごめんね。関口くん。なんだか、昔のこと思い出しちゃって。なんだか」
「いいって」
関口は苦笑する。
自分も楽しかったのは事実だから。
「また練習で」
荷物を取り上げて席を立つと、彼女が関口の腕を引いた。
「あの、携帯の番号、交換できない……?」
「え?」
「いや。ほら。コンマスでしょう?なんかあったときすぐ連絡とれるようにって思って」
安岐は俯いている。
「分かったよ」
関口は携帯の番号を教えて席を離れた。
「じゃあね。安岐」
「うん」
彼女はいつまでも関口のことを見送っていた。
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