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23 すれ違い13
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「11月に毎年恒例の星音堂主催の文化祭を開催する」
朝のミーティング。
水野谷の言葉に職員は顔をしかめた。
「げ~。またかよ……」
「むっ!なにか言ったか!?星野?」
ぼそっと呟いたのに聞こえていたらしい。
星野はいいえと姿勢を正す。
「去年は、隣の県のブラスバンドにお願いをしてチャリティーコンサートを行うことが出来た。今年はどうするか?皆にも考えてもらいたい」
「課長、また仮装するんですか?」
「するっ!」
吉田の質問に水野谷は即答した。
一同はげっそりだ。
「普段、市民の皆様には馴染みのない我々だが、公務員であることを忘れずに。地域の皆様が楽しいひと時をすごせるようにしなければならないのだ」
「……」
彼の熱意は分かる。
分かるのだが。
それとこれとでは、話が別のような気もする。
「ともかく!どんな催しをしたいのか?それと、我々事務職員がどんな余興をするのか。皆で考えておいてくれ。また来週の木曜日にミーティングでこのことについて話し合うからね」
一同は難しい顔をしていた。
「さ、今日も一日宜しく頼む!」
水野谷の言葉で朝礼は解散。
それぞれはパソコンに向かう。
席に着くと、星野が蒼に話しかけてきた。
「おい」
「はい?」
「お前、大丈夫か?喉」
「あ。すみません。もう少し経つと治まりますから。どうも朝は調子が出なくて」
「そっか?」
「はい」
星野は頷くと書類に視線を戻した。
ひゅうひゅう鳴っている喉。
吸入もしてきたし、もう少ししたら良くなるのだ。
蒼はパソコンを扱う手を休めて画面を見詰める。
「……」
昨夜のこと。
気にならないといったら嘘になる。
関口は友達と逢うと言っていた。
たしかにそうなんだろう。
急だったし。
だけど。
帰ってきた関口からは女性の匂いがしていた。
友達って言っても同性とは限らない。
それは蒼だって知っている。
関口には桃みたいな友達だっているのだから。
だけど、なんだかはっきり言わないから不安になってしまう。
「はあ」
なにもないから話さないのか。
なにかあったから話せないのか。
それが気になるところだ。
だけど、自分ひとりで考えてもなにも答えは出ないことなのだ。
これは関口の問題でもあるのだから。
蒼は頷く。
関口が言ってくれるまで待つことにしよう。
余計なことを言って彼を困らせては可哀相だ。
大丈夫だ。
関口なら。
蒼はもう一度頷いてから、仕事に手を付けた。
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