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23 すれ違い17
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息がつけない。
手を伸ばして吸入薬に手を伸ばすが、慌てていたので手元が定まらない。
吸入の容器が音を立てて床に落ちこんだ。
「はあ、はあ……あれ?」
布団に潜ったまま、蒼は床に手を伸ばす。
「げほげほ」
やっとの思いで見つけたそれのふたを開け、ダイヤルを合わせて吸い込む。
「ひゅー、ひゅー……」
吸入をしてから深呼吸を繰り返すと、少し楽になった気がした。
「はあ……」
たくさん咳が出たので涙がこぼれる。
ふとんを避けて、天井を見詰めた。
いままではこういった生活をしていたのだ。
ふと頭を過ぎる。
関口がいなくても生活をしていたのだ。
「関口……」
結局朝だ。
喘息の発作は深夜から朝方が多いというがまったくその通りだと思う。
その言葉どおり、朝方に酷くなることが多かった。
「大丈夫だ。……大丈夫」
いつも関口が言ってくれる言葉を自分で呟く。
「大丈夫……」
身体を起こして膝に手を当てて、上体を前に傾ける。
冷や汗と涙。
でも本当に泣きたいのは、関口がいないからだと思う。
「関口のバカ……」
呼吸を整えながら、蒼は目元を拭った。
すずめが鳴いている。
夜が明けたのだろう。
結局、朝方の発作から眠れることはなかった。
発作と不眠のせいで著しく体力は落ちる。
時間になってベッドから起き出すのもやっとだ。
「お腹減った……」
今週は長い。
まだ木曜日。
今週は日曜日が休みだからあと3日は頑張らなければならない。
顔を洗おうと洗面台の前に立ってがっかりした。
鏡の中の自分の顔は最低だ。
くまもいいとこだ。
大きくため息を吐いてから蒼は出勤の準備をした。
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