アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
23 すれ違い18
-
「圭」
なんだよ~。
もう少し寝かせてくれ。
なんだかあちらこちらが痛む。
どうなってんだ?
なんでこんな寝苦しいところにおれはいるんだ?
「圭ってば」
だからうるさい。
もう少し寝かせろ。
蒼。
蒼?
え?
蒼は名前で呼ばない。
なに?
「ん!?」
びっくりして目を開ける。
「おはよう」
「あれ!?」
目の前には朝陽に照らされた安岐の姿があった。
「あ!おれ……」
そうだった。
結局、あの後も彼女に泣き着かれて。
ソファで眠ってしまったらしかった。
「昨日はありがとうね」
「安岐」
昨晩とはまったく違う。
彼女は笑顔だ。
「安岐?」
「なんか、圭に一晩付き添っててもらったら元気がでたよ。わたし。別れる事にした」
「はあ!?」
関口は、彼女の言葉に唖然として身体を起こす。
一晩ソファで過ごしたのだ。
腰も背中も痛かった。
「もうあんな彼とは付き合ってられないもん。吹っ切れた」
勝手すぎる。
さんざん、人を付き合わせておいて。
これで別れられたら、自分が原因みたいじゃないか!
「安岐!」
「いいの。圭はなにも悪くないんだから」
「でも」
「圭。そのかわり、わたしを助けてくれる?わたし、頑張って立ち直るから」
「……」
「わたし、仕事に行くね。失恋で仕事は休めないもの。圭はどうする?」
「どうするって帰るよ」
「そう。残念ね」
安岐は寂しそうな笑顔を見せる。
関口は混乱した。
なんだか、自分の思惑とは悪い方向に向かってしまっている気がする。
動悸がした。
「やばいなあ……」
関口は時計を見る。
蒼は出勤してしまっているだろう。
言い訳の言葉もない。
ここまできてしまうと『前の彼女』なんてますます言いにくくなってしまっていた。
「あ。そうだったよね。圭は彼女がいるっていってたっけ。なんだか彼女に悪いね。外泊させちゃって」
「彼女……?」
そうか。世間一般でいったら、恋人といったら彼女だ。
「違うの?」
「いや……」
はっきりいえないことが歯がゆい。
しかし、蒼だとも言えない。
安岐は市民オケで星音堂に出入りしているのだ。
蒼に迷惑がかかってしまう。
「……。もしかして、圭もうまく行ってないの?」
「え!それは違う!うまくいってるって!」
「そう?」
「うん」
お前さえいなければなと思う。
関口は優しいところがある。
しかし、さすがにここまでくると付き合いきれない。
「安岐」
「ん?」
「悪いんだけど。おれもさ、一人じゃないし。今回みたいなことはちょっと困るんだよ。あいつにも迷惑をかけるし」
さすがに限界だ。
なんだか誤解されてしまっているようだし。
自分は安岐にとったら、ただの都合のよい男になってしまっているのかも知れない。
それでは困るのだ。
もうこれ以上、巻き込まれないようにしなくてはいけないのだから。
「え……。わたし、そんなつもりじゃなかったの。ごめんなさい」
安岐は再び涙目になる。
関口は泣かれると弱い。
だけど、ここは心を鬼にしないと。
いつまでも同じことの繰り返しになってしまう。
「ごめんなさい……」
「いや。今回はおれも悪かったから仕方ないけど。もうお前とはこういう付き合い方はしたくないんだ。友達なら友達の範囲で付き合って行きたい。そうじゃないと、あいつに申し訳がないからさ」
関口の言葉に安岐は息を呑む。
まさか、ここまで言われるとは思わなかったのだろう。
「圭。本当にその子のことが好きなのね」
「当たり前だ。おれの大切な人だからね。無断外泊なんかして悲しませたくないんだ」
「……ごめん」
俯いている彼女。
本当だったらここで優しい言葉をかけるところだけど、我慢した。
関口は安岐を残して、さっさとアパートを出る。
今から帰ったところで蒼は仕事だろうけど。
早くあの家に帰りたい。
そう思ったのだ。
関口が出て行った後。
安岐は顔を歪ませる。
「もう少しだったのに。……なによ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
174 / 869