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23 すれ違い23
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定時で帰ると帰宅ラッシュに巻き込まれる。
自転車でよたよた走っていると、高校生にびゅんびゅん追い越されて大変だった。
「は~……」
階段をやっとの思いで登り、そのままベッドに横になる。
「……」
結局、関口と逢うことはなかった。
彼からのリアクションもなにもないし。
どうしたらいいのだろうか?
今晩も帰ってこなかったらどうしよう?
もう一生、ここに姿を見せなかったらどうしよう?
恐くなって周囲を見渡す。
まだ彼の荷物はいつも通り置いてある。
だけど、蒼が仕事に行っている間に引き払われてしまったら。
すごくショックだ。
悪いことばっかりぐるぐるする。
「やめやめ」
こういうことは考えるのはやめよう。
きっと彼は帰ってくる。
今日はここに帰ってくる。
だけど、彼に逢ったらどんな顔をしよう。
どんな態度をとろう。
どんな言葉をかけよう……。
夕方になってそればかり考えていたら、星野に「帰れ」と言われてしまった。
蒼としては午後になって調子が戻っていると思っていたのだが。
顔色がますます悪く見えたらしい。
星野だって、なにか心配ごとがあるみたいなのに。
蒼の心配をしてくれているのだ。
本当にいい人だ。
なにか自分も、彼の力になることができないだろうか?
いろいろ考えてしまう。
ごろんと寝返りを打ってふと自分の携帯を見つけた。
そういえば、今日は携帯が手元になかったかも知れない。
携帯は充電器に繋がっていた。
昨日、自分でやったのだろうか?
いやそんなはずはない。
昨日はそれどころじゃなかったから。
「今日は忘れてったんだ」
今頃気がついた。
寝不足は重症だったらしい。
電源を入れるとメールが来ていた。
『関口:ごめん』
それだけだった。
「関口……」
思わず大きな瞳から涙がでた。
ごめんってどういうこと?
外泊したこと?
それともお別れ?
突然のことで自分でも涙の意味が分からない。
「おれ……」
起き上がって蒼は顔を抑える。
「おれは……」
辛い。
胸が締め付けられた。
いつのまにか、自分の中の関口は大きくなってしまっていたらしい。
全然気が付かなかった。
「逢いたい、関口に……」
蒼は嗚咽を漏らした。
自分にとって必要だ。
彼が。
とても。
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