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24 宮内という男3
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来客だとばかりに一同は笑いをこらえた。
仕切りも何もない状態なので、事務の机が置いてあるところは受付からみたら丸見えだ。
星野は蒼と男の様子を見ていたが、メモになにやら書き込んでから吉田の頭めがけて投げた。
ぽか。
「!」
吉田はパソコンの前に落ちたメモを開く。
『覗き見男だ!!』
ビックリして吉田は、男を見詰める。
漆黒の髪で、整った顔立ちの育ちのよさそうな男だ。
なんだか星野の話から想像していたのとは、随分かけ離れていた。
あれが覗き見変態?
見えない。
「……?」
吉田はメモを隣の席の尾形に回す。
尾形もメモを見てから男を見る。
吉田と同様の反応だった。
そして、氏家、高田とメモは回る。
みんな一様な反応であった。
どうしても覗き見をしていると言うと、胡散臭いようなイメージだが……。
「えっと……。ホールは二つ。大・中があります。こじんまりしたリサイタルでしたら中がお勧めです」
「大ホールがいいかな?」
「大ホールですと。こちらになります。利用料が一時間あたりこのくらい。半日で大体、20万弱ですね」
書類の説明は苦手だ。
蒼は一生懸命説明をする。
遠視なのでコンタクトを使用している蒼。
細かい字はピントをあわせるのが疲れる。
何度も大きな瞳を瞬かせている。
「パイプオルガンの使用はございますか?」
「いや。ピアノは使いたい。種類は?」
「ピアノはヤマハとスタンウェイがございますが……。費用は一律です」
一同は、蒼と男をじっと見詰める。
男は蒼の言葉には返答するがちっとも書類を見ていない。
それどころか、蒼の顔をまじまじと見ていた。
「まあ。リハーサル時間も入れますと、平均して使用される時間は半日です。一般的にはこのくらいになるでしょうか……?」
蒼は電卓を弾いて顔を上げる。
ばっちり男と目が合う。
ビックリしてしまった。
普通、こういう場合は電卓を見ているものだ。
なんで自分が見られているのか訳が分からない。
「は!?……あの……。なにか?」
一瞬、関口と初めて会ったときのことを思い出す。
あのときも、こんな風にじろじろ見られた。
「いや。ありがとう。参考にするよ」
男は電卓にも目もくれず、すっと立ち上がる。
「あ、あの。資料は……」
「いや。いい。では失礼」
男はすたすたと、事務室を出て行ってしまった。
「!?」
なんだよ。
じろじろ見て……。
失礼な男だと思った。
蒼は資料を片付けてから自分の席に座る。
「結局は蒼狙いだったか……」
星野は言う。
「なんです?」
話が見えない。
「お前、気をつけろ」
「うんうん」
一同も同意する。
「なんの話ですか?」
「いや……」
蒼の疑問もよそに仕事に戻った事務室は静まり返っていた。
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